第59話 パーティーの次の日の事

罰を与えられた貴族の公子公女は、3日以内に家を出て行く事を命じられた。


ムツキは鬼ではないので、最後に家族との別れを惜しむ時間を与えたのだ。


しかしこれは、一般庶民としての生活しか知らないムツキだから思う事で、貴族達にとっては、この3日間がその後の苦しみを大きくする結果となる。


家によって、家の面汚しと戻る間もなく切り捨てられればそれはそれで精神的な傷を負うだろう。


しかし、この3日の怖い所は、最後だからと母親などが甘やかして豪勢な食事などを与えた場合である。


勿論、母親や家族、家令などに悪気はない。

去り行く子供への最後の手向け。


だが、最後にいつもの生活よりも贅沢な生活を送る事でこれからの平民の生活に耐えられなくなる。


家からの援助が禁じられていると言う事は、勿論、価値のある物の持ち出しも禁止されるし、仕事の斡旋も禁止される。


今まで貴族のお坊ちゃんお嬢ちゃんで、貴族の教育は受けても、平民の生活を馬鹿にしてきた者がまともに生きられるのだろうか?


身を寄せ合ってなんとか生きられればそれはよし。


ただ、世間はそんなに甘くはない。


身元不明の傲慢な人間を雇う者は居ないだろう。


となればスラム街で生きるのだろうか?いや、生きられるのだろうか?


食うに困って犯罪を犯すか。それを裁くのは誰になるのか。


負の連鎖を断ち切る事が出来なければ、一番酷い死刑の形になるかもしれない。




しかしそんな事を想像もしていない公子公女達は、家の好意に甘え、最後の3日間を過ごしている。


その時間で、自分の事など棚に上げて、周りで一緒に罰を受けた公子公女のせいにして悪口を言ったりして。


そして聞いているのは最後に甘やかす様な親だ。肯定して子供が可哀想だと慰めた。


そうすれば、追い出された後に協力する芽を摘む事になる。


そして3日を待たずして、追い出された者が2人、ボロを着て市場を歩いていた。


目に映る食べ物の匂いに腹が鳴りながらも、貴族としてのプライドが邪魔をして食べたいと言う感情に嘘をついていた。


しかしこれも初日だからだろう。


とは言え、物を買う金もないので食べたいと思ってもたべられない地獄はあるのだが。


「あなたがあんな事をしでかすのが悪いんです」


「な、お前だってあの場所にいて笑ってたじゃないか!」


その2人の男女の名前はシカムとヤリーシャ。


元伯爵家の2人はお互いに罪をなすりつけながらも仲良く並んで歩く。


この2人がこれからどう生きて行くのかは、まだ誰も知らない。

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