第52話企み

絶対におかしいのですわ!


父親のアグニールにはぐらかされたトリエは自室で怒りがおさまらぬままウロウロとテーブルの周りを歩いていた。


そもそも、ドラゴニア聖国はこの世界のトップのはずだった。

それを、ぽっと出の平民の下に降ったなどと、初代の勇者様に顔向けできない。


これは、ムツキとドラゴニア貴族達が顔を合わせる前、一部の貴族が家で愚痴をこぼしており、それを聞いた貴族の次代達が、その通りだと社交会で話していたのをトリエも聞いてそう思い込んでいるだけなのだが、ドラゴニアと言うトップの国で、甘やかされて育ったトリエの当然の考えと言えよう。


「そもそも、あの桃色の髪も気に食わないのですわ!」


アグニール、そしてトリエ。ドラゴニア聖国の王族は基本赤髪である。


これは初代聖王の第一妃が赤髪だった事からその血が続いているとされている。


マルグリッドにも昔に王族の血が混じっており、シャーリーはその先祖返りとして桃色の髪だと言われていた。


「私は、お姉様の様にはなりませんわ!」


トリエの姉は、他国の王家へ嫁いでいる。

トリエはそれを格下に降ったと馬鹿にしていた。


ドラゴニア聖国がこの世界のトップなのだから、ドラゴニア王家こそ頂点。

自分は王家の生まれなのだから、王位を継ぐ兄に嫁ぐ事はできない。


だから、王家に1番近い公爵家に嫁ぐ事を選んだのだ。


選択肢の中で、優位な立場であり続ける為に。

それに、公爵家だけあって、婚約者は顔が整っていた事も選択した理由の一つだ。


「そうですわ!これまでの様に、シャーリーみたいな女性らしさのないペタンコを気にする殿方など、誘惑してしまえばいいのですわ!」


男性と同等。もしくは男性によればそれよりも長身で、胸の無いシャーリーは貴族の間ではどれだけ顔が整っていようと女性らしさに欠け、魅力が劣ると言われた。


だから、少し小柄で愛らしい顔に胸の大きなトリエが誘惑すれば、トリエに絆され、良い様に扱ってきたのだ。


「たしか、今度ドラゴニア聖国とその平民との交友の証にパーティーがありましたわね。 そこでシャーリーから奪って差し上げましょう」


名案に気分が良くなったトリエは、その後は機嫌良く、パーティーまでの日にちをエステなどで自分の美貌に磨きをかけるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る