第50話シャーリー・マルグリッド

無事にドラゴニア聖国の貴族達に反対される事なく、ペトレ共々傘下に収めたムツキは、ドラゴニア聖国の貴賓室にいた。


部屋の中にいるのはムツキとエレノア。

そして、シャーリーである。


先程の式典?が終わった後、ムツキはアグニール王にこの部屋へと通され、俗に言う後は若いもの同士で、の要領で部屋にはこの3人が残されたのであった。


ムツキの前にはエレノアとシャーリーが向かい合う形で立っており、身長が高いシャーリーが見下ろす形になっている。


シャーリーの鋭い目つきでエレノアを見る様、そして対するエレノアは優しい笑顔でシャーリーを見上げており、アニメであれば、ゴゴゴゴゴと言うテロップと共に、ドラゴンと狼が向かい合う背景が描かれそうな緊迫した雰囲気をムツキは感じた。


一触即発かと思われたその時、シャーリーが初めに言葉を発した。


「ムツキ様、エレノア様。まずはお座りになって下さい」


シャーリーに言われるがままにムツキとエレノアは部屋のソファに座ると、シャーリーはテキパキとした様子でティーセットの用意をして、慣れた手つきで紅茶を淹れた。


「お口に合うかわかりませんが」


シャーリーにそう言われてムツキとエレノアは一口紅茶を飲んだ。


「おいしい…」


「シャーリーさん、とても美味しいですわ」


ムツキが不意に口から漏れたのに対してエレノアはシャーリーを褒めた。


シャーリーの頬がほんのりと赤く染まり、少し顔を背けた。


ムツキの嫁にこのシャーリーが選ばれたのにはちゃんとした理由がある。


マルグリッド伯爵は軍務卿である。


シャーリーは文武両道。軍務に携わる家に生まれた者としてしっかりと武術を学び、自身も騎士として国に仕えてきた。


騎士としては体型にも恵まれ、良く言えばモデル体型。

170を超える長身に引き締まったウエスト。

戦うのに邪魔になる胸は慎ましく、親譲りの眼光は力強い。


性格は女性らしく、可愛い物好きであり、お茶や、お菓子作りが好きなのだが、どうしても役職や見た目で貰い手が付かず、この年齢まで貰い手が決まらなかった事に本人は落ち込んでいた。


アグニールや、他の上位貴族達が話し合った結果、同年代には人気が無いが、自分達の娘の様に我儘な所はなく、年齢にさえ目を瞑れば性格、気立てのいいシャーリーなら第二夫人としてエレノアを立てることもできると太鼓判を押したのだった。


「あの、ムツキ様は私でよろしいのでしょうか?」


シャーリーの口から紡がれた疑問の言葉に、ムツキは首を捻った。


「私は、小柄とは言い難く、目つきも怖いと言われます。殿方に自慢する様な胸も無く、年齢ももう19になってしまいました。そんな私でも、ムツキ様はもらってくれるのでしょうか?」


ムツキは、質問の意味を理解して衝撃を受けた。


19歳はムツキが思うに若いと言っていい。

確かに目力は強いが、クール、カッコいいと言う言葉が似合うし、体型にしても、雑誌の中から飛び出してきたのかと思う様なスタイルの良さだ。

悲観する部分は1つもなかった。


それに、性格にギャップがあり、可愛らしいと思うし、エレノアと仲良くなって貰えれば、コチラからお願いしたいと思う。


「いや、シャーリーはとても綺麗だよ。私には勿体無いくらいだ。私やエレノアと仲良くしてくれると嬉しい」


ムツキの言葉を聞いたシャーリーは顔を真っ赤にした。

これまでの経験で、男に綺麗などと言われた経験は無いのである。



「シャーリーさん。ずっと立ってないで座ってお話しましょう。私は、シャーリーさんの事をもっとしりたいですわ」


エレノアも好印象の様でシャーリーを笑顔で手招きした。


その後は、食事の時間になるまで、夫婦になる予定の3人で楽しく会話の花が咲いたのだった。






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