第10話 帝都散策

ムツキは、昼間になってから宿屋から出て街へと繰り出した。

朝からスキル習得のアナウンスが流れているが、あるスキルのお陰で気になることはない。


あるスキルとはこれもまたマルチなのだが。

今朝気づいた事なのだが、複数の事を同時に考える事ができる。そして、メインで考えている事以外はミュートとまではいかないがバックグラウンドで考える事ができる。


マルチは多分複数の効果を有していると思う。

メインがマルチ商法よろしく他人のスキルを数珠繋ぎに一つ習得できるスキル。

もう一つが複数の情報処理を同時に行う能力。

マルチタスクとも言えるだろスキル。


多分ではあるがマルチと付くスキルが複合されているのではないかと思う。


それはいいとして街の散策に出たのだが何をするのかと言いますと、傭兵ギルドへと向かっていた。

とりあえず生活するにも金策が必要だと思い、宿の女将さんに相談したのだ。

すると、傭兵ギルドは職業斡旋もしているからと紹介されたのだ。


なので街の散策がてら目指すは傭兵ギルドである。

ちなみに、この国には冒険者ギルドは無いらしい。


散策中に屋台からいい匂いが漂ってくるが、ここはグッと我慢する。

なにせ無職なのだから節約をしないと。


そんなこんなで歩いていたら、何処からか声がかけられた。


「ムツキさんじゃないですかー」


声のする方に振り向くがそこに知り合いは居ない。


「上ですよ、うえー」


目線を上に向けるとそこにはミールが手を振っていた。


「良かったら中に入ってきてくださいー」


どうやらここは帝都のリフドンの店の様だ。

誘われれば中をぶらりと見ていくのもいいだろう。

そうして中へ入るとミールの他の店員が挨拶してくれ、続いてミールが降りてきて挨拶して接客を引き継いでくれた。


「リフドンさんもいますよ!呼んできますか?」


ミールはそう言ってくれるが昨日のリフドンからの通知を見ている為、遠慮しようと思う。

どう話していいかわからない為だ。


「おう。ムツキが来たみたいだな」


そんな俺の考えは気を利かせた店員によって打ち砕かれた。


「お前のおかげで、たんまり稼げたぞ。それでな、取引相手がお前に興味を持ったらしくて会いたいそうなんだが暇な日はあるか?」


おう。どうやら逃げ場はない様だ。

驚くぞ。といたずら心がありそうな笑顔を浮かべているリフドンだが、その笑顔で察せてしまいます。


「今週は仕事を探そうと思っているのでその後でも良ければ」


「そうか。こっちも日程を組めた方が都合がいいからな。7日後に予定しておいてくれ」


「…分かりました」


多分謁見が決まってしまいましたとさ。


その後は世間話を少しして店を出る。


今度こそ傭兵ギルドへ向かっているとまたもや声をかけられてしまった。


「にいちゃん、昨日の」


声をかけてきたのは昨日の食堂で一緒になった女性だった。


「ん?これはやらないよ?」


失礼ながら俺の目線は女性が食べていた串焼きに行っていた様だ。

女性はそう言って残りを食べてしまった。


「なんだ。残念そうな顔して、そんなに金がねえのか?」


「いえ、まあ今は無職でして、これから傭兵ギルドに職業斡旋でもしてもらいに行こうと思ってるんですよ」


「ふーん。じゃあ連れてってやるよ。

それに、無職でも落ち込むことはないさ。私も無職だ。街の外で魔物を狩ってそれを傭兵ギルドに売って過ごしてるんだ。

ほら、行くよ」


そう言って前を歩き始めるので、ついていく事にする。


「お前も仕事が無けりゃ魔物を狩ればいいさ。獣より金になる。怪我は覚悟しないといけないけどな」


そう言って女性はお腹の傷を撫でた。

ここまでの旅でステータスも上がったしそれもありかもしれない。

異世界での生活のイメージもその様な感じだしありだな。


そんな事を考えながら、女性の案内で傭兵ギルドへと向かうのだった。

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