第2話 ステータスチェック

「おい、カズマ!聞いたかよ?スキル取得だ!異世界だ!」


「ああ!俺は魔法スキルSSをもらったぜ!」


「俺は俺は剣術スキルSS《聖剣》!ミサとアキは?」


「えっと回復術SSって言ってた」


「私は弓術スキルSS《聖弓》みたい」


コホン!


盛り上がっていた少年少女はその咳払いに周りを見渡し、咳払いをした上段の国王を見上げる。


初めに喋り出した少年ユウジはその状況に目を輝かせて言葉をまった。


「うむ。まずは呼び出しに答えてくれてありがたく思う。君達は選ばれ、呼び出された強者だ。我が王国を導いてほしい」


国王の言葉にユウジは首を捻った。


テンプレだと魔王を倒してほしいとか、他の侵略国から守ってほしいとか、そう言った話が多く、ユウジもそれを期待していた。

しかし、国王が言った導いて欲しいとはどう言うことだろうか?


「その、導いて欲しいとはどう言う事でしょうか?魔王を倒してほしいとか侵略から守ってほしいと言う事でしょうか?」


幼馴染のミサが国王に質問している。


ユウジやカズマの影響を受けてこう言った話が好きなミサも、やはり疑問に思ったのだろう。


「魔王とは?魔国と言う国はないが…

侵略もされておらん。今の我が国は戦争もなく平和である。

予言によると、そなた達の力を借りて我が国は世界の覇権を手にするとある。そこに、力を貸してもらいたい」


それは、口伝による伝承を国王が都合良く解釈しただけだったのだが、その言葉を聞いた少年少女は漫画やアニメなどの知識で辻褄を合わせ、そう言う事かと納得してしまった。


その後、話はトントン拍子に進み、異世界恒例のステータスチェックである。


少年少女は嬉々として挑み、国王達を満足させるステータスを叩き出した。


-ユウジ-level1/100


HP450

MP250

攻撃力83

防御力78

魔法攻撃力72

魔法防御力65

スキル:剣術スキル《SS》



-カズマ-level1/100


HP360

MP360

攻撃力62

防御力47

魔法攻撃力128

魔法防御力96

スキル:魔法スキル《SS》



-ミサキ-level1/100


HP470

MP420

攻撃力43

防御力62

魔法攻撃力56

魔法防御力60

スキル:回復術SS


-アキホ-level1/100


HP480

MP380

攻撃力56

防御力59

魔法攻撃力49

魔法防御力45

スキル:弓術スキル《SS》



「素晴らしい!レベル1でこの強さとは!しかも上限が100とは!大体の平均が60。最大で80まで確認されているが、ううむ…レベルは大きくなる程に上がりにくくなるが、可能性の塊だな」


説明によれば大体少年少女と同じ16歳ならレベルは12位。高ければ15程。

そしてそのステータスは平均が25位らしい。


城の騎士達でレベル30程度。歴戦の英雄で50位になるそうだ


ステータスはlevel1のステータスを元に上昇率が決まる為、将来有望でありさすが召喚者だと太鼓判を押された。


「さて、所でそちらの呆けておる最後の召喚者は知り合いかな?」


「いえ…」


全員の視線が男を捉えた。


___________________________________________


男は、睡魔に負けてたったまま気を飛ばしていた。


肩を揺さぶられ、目を覚ますと知らない豪華な部屋におり、異国風の人々に囲まれていた。


男は起こしてもらった少女に、今の状況を説明してもらった。


なんと俺は、異世界に召喚されたらしい。



異世界…異世界?異世界!

家に帰れない!仕事はどうする!仕事ができない?もう仕事しなくていい!ブラック企業退社!


「ばんざーい!」


急に大きな声で叫んだ俺に、周りの異国風の人達は驚いている。


共に召喚されたであろう少年がうんうんと頷いているのが見える。


いやいや少年、君はブラック企業など経験した事ないだろう?


そして、俺はステータスチェックを受ける。


-ムツキ-level1


HP2

MP2

攻撃力2

防御力2

魔法攻撃力2

魔法防御力2

スキル:ねずみ算/マルチ



ステータスを見て、先程まで和気藹々とした空気だった広間が急に静まりかえった。


無言。その無言を破ったのは宰相だった。


「な、なんだ?このゴミみたいなステータスは?」


「い、いや、宰相よ、スキルが特別なのかもしれん見た事もないスキルだ…」


「しかしレヴィス王、ネズミなど、害をもたらす獣ですぞ?」


「いやしかしな…とりあえず、スキルの効果を確認してみようではないか?」


そう国王側の方針が決まりかけた時、少年の一言が広間に響いた。


「おっさん!異世界召喚なのに、なんだよそのステータスは?スキルの通り詐欺じゃん!」


少女の1人が「ちょっと!」と言いながら少年の服を引っ張る。


しかし、国王に「詐欺とはどう言うことだ?」と質問された少年の言葉は止まらなかった。


「僕らの世界で、ねずみ算と言うのは昔流行った詐欺の一つなんです!

だから、ほら、異世界召喚って言ったら強力なステータスを、もらうのが定番なのに…ぷぷっおっさんのステータスにピッタリでしょ?」


正確には詐欺はねずみ講で、ねずみ算はその由来となった計算式なのだが、少年にはその違いは分かっていないのだろう。


「な、なんだと!国王に対して詐欺を働いたのか?」


宰相の怒声が上がった。

国王が宥めようとするがステータスの低さに蔑み、詐欺というワードに反応した宰相は止まらない。


「いいえ、レヴィス国王!ユウジ殿達の召喚に便乗して私利私欲を尽くそうとしたのでしょう!出て行きなさい!追い出せ!衛兵!」


瞬く間に、ムツキは白の兵士達によって城の外まで追い出されてしまった。

場所は城門の外、坂の下には大きな城下町が見える。


追い出されたムツキだが、清々しい気分だった。


もう労働時間過多なブラックな仕事をしなくてもいい!

勇者やら何やらめんどくさい仕事を押しつけられる事もなかった。


これからは、自分の自由に生きていこう!

解放された喜びに心躍らせる青年ムツキは、これから暮らす事になるこの世界のことを知る為に城下町へと向かうのだった。

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