第23話 激突!

日本国、東京都港区 汐留駅近辺

ワトソン重工の日本支社ビル

2025年3月某日 午前11時05分頃


信長は乗っていた自衛隊のブッシュマスター防護機動車から下りて、ワトソン重工の日本支社ビルを見上げた。


彼のような主(マスター)級の吸血鬼となると、紫外線に対して耐久性が付いている。まして春前の3月上旬の曇った空は彼には何の問題にもならなかった。


一緒に下りた森警視監、黒岩弥生とヘルムートは長寿者(エルダー)とはいえ、特殊日焼け止めクリームで紫外線対策を取っていた。中山新一は日中(ディー)行動可(ウォーカー)のため、特別に対策してなかった。


警視庁で合流したアーカード卿の眷族のミナ・ハーカーとマモールデ王子が同じく乗っていた別のブッシュマスター防護機動車から下りて、信長たちとビル前に並んだ。


自衛隊の73式大型トラック4台は残りの精鋭部隊をビル入り口近くの大きな駐車場まで運んだ。


信長は専用アサルトスーツと愛刀、へし切長谷部を帯刀していた。もう一振りの愛刀の薬研藤四郎を背中に担いでいた。森から説明受けていた9mm機関けん銃、通称エムナインは簡単に扱うことが出来たが、生意気な小童とその仲間を切りたいと言い、車の中に置いた。


森、弥生と新一は専用のアサルトスーツ、銀コーティングされた日本刀、エムナインと9mm拳銃を所持していた。ヘルムートは銀コーティングされたロングソードと義手、森から提供された同じくエムナインと9mm拳銃を所持していた。


ミナとマモールデは専用のアサルトスーツ、ミナはHK417とSIG SAUER・P320を所持し、マモールデはH&K MP7とM1911を所持していた。アーカード卿は今回の合同作戦には眷族中最高の戦闘員を送ると闇の評議会に報告していた。


彼らの後ろに100人の隊員が並んでいた。全員転化人(インヒューマン)で信長は江戸時代から自らスカウトしてきた者ばかりと本日に転化した10数名のうち、5名も入っていた。


「近くで見るとやっぱり大きいな。」


信長はつぶやいた。


「商業建物ではなく、完全に要塞ですね。」


森が付け加えた。


「織田信長陛下、恐れ入ります、私には例の南米人主マスターとの因縁がございます。本来、私が12年前にきちんと始末していれば、日本は彼の侵入に悩まされずに済んだ。」


膝をつきながらヘルムートが信長に戦う許可を求めた。


「一番面白そうなところを持っていくなと言いたいが、ヘルムート殿のお願いなら仕方ないな。他で我慢するので、きちんとあの生意気な小童を滅ぼしてくれれば、私は文句言わん。」


笑顔を見せながら信長は応じた。


「ありがとうございます。申し訳ございません、陛下。」


「ヘルムート殿、雑魚を片づけて、宴会にしましょう。ほぼ100年ぶりに目覚めたので、私は遊びたいのだ。」


豪快に笑いながら信長は話した。


「我が主(マスター)、私は先陣を切りたい。」


弥生は信長に話した。


「弥生、我が姪よ。準備運動が必要な私がやるのだ。門を突破したら、好きに暴れて構わんぞ。」


信長は彼女に伝えた。


「承知致しました。伯父上様。」


弥生は答えた。


「お館様、危険なので、この私が先陣を切ります。」


と森成利。


「心配性だな、成利よ。私がやるのだ。これは主(マスター)としての務めだ。」


「承知致しました。申し訳ございません、信長様。」と森は謝罪した。


「謝らんでよろしい、お前たちは我が眷族、我が系統、我が家族。お互いをかばい合うのは当然。」


真剣な口調で信長が話した。


「仰せの通り、我が主マスター。」


全員は一斉に唱えた。


「本当は私が暴れたいのだ。」


とまた笑いながら信長は皆に伝えた。


全員笑ったが、強化グラス越しのビル内から凄まじい殺気を皆感じ取った。



同時期


田原は信長たちのやりとりを不思議そうに見てた。


これから自分たちがいるワトソン重工の日本支社ビルへ突入するのに、まるでピクニックに行くかのような動きだった。


「舐められてますね。」


怒りを感じて、一人でつぶやいた。


その時、入り口ホールの奥にあるエレベーターのドアが開き、田森元首相と小島が出てて来た。


「おお。集まっている、集まっている。」


小島は興奮気味に話した。


「あの傾奇者(うつけ)を必ずやっつけて、日本を自由にする、小島さん。」


田森は小島に話した。


「そうですね、田森先生。」


小島は応じた。


また奥のエレベータードアが開き、今度セキュリティー責任者の小橋と元大統領が出て来た。


入り口大ホールにいた全員、膝をつき、頭を下げた。


「日本の主(マスター)はこの私が食い殺す。」


と大統領は声(テレパス)で皆に伝えた。


田森は驚いた、てっきり自分が信長を相手にできると思っていた。


「お前たちは侵入者全員を殺せ。いいな。誰一人も生かすな。」


と強い怒りの籠った声(テレパス)で全員に命令した。


田森は何か言うと思ったが、主(マスター)のオーラ全開を感じて、意見を自分の中に閉まった。


大統領が発する凄まじい殺気を全員が感じた。得体の知れない悪意に満ちた巨大な黒いオーラがその場に留まり、小島を含め、全員に恐怖を感じさせた。


その時だった、先まで外で笑っていた日本の主(マスター)が入り口の巨大扉へ向けて歩き出した。その後ろに6人の強者が歩いていた。


大統領は自分を滅ぼしかけた闇の評議会のドイツ人戦闘員を見て激高した。


「あの男。許さん、糧にしてやる、闇の評議会戦闘員!!」


と大統領は口から7本の触手(テンタクル)牙(ファング)を出して、声(テレパス)で怒った叫んだ。


田森はそれを聞いて、自分が信長を滅ぼすチャンスがあると思った。




11時10分頃


信長はゆっくりとビルの入り口扉へ向けて、ゆっくり歩いた。


閉まっていた強化ガラスで出来た自動ドアと壁のような強化フロントガラスはおそらく大砲の攻撃に耐えられるように出来ていると思った。


それならば、奥の手を使えばいいなと閃いた。


中から待機している敵の部隊は見えている、全員重装備している。そして部隊の後ろに薄汚いオーラと薄汚い殺気を発しながら、蝋人形のような顔をしている中年男性が居た。そいつは宙に浮いていて、口から触手のようなものを出していた。


「汚い。」


と信長は軽蔑の一言話した後、手を上げ、強化ガラス一面の入り口に向けて、主(マスター)覇気を全開に放した。


強化ガラス一面は振動し、割れ始めた。信長は更に覇気オーラに念を込めたので10秒でガラス一面が爆発にあったかのように中へ散っていた。


「邪魔するぞ。」


大きな声で怒鳴り、ビル内に入った。


一斉に中にいる部隊が銀の弾丸を発砲し始めた。


信長は素早い動きで、愛刀を使って、全弾を切って落とした。


「それだけか?貴様ら。」


怒りを解放し、敵部隊に対して、地声で怒鳴った。


一瞬敵は怯んだように見えたが、その時だった。素早く一人の男が信長めかけて素早く動いた。


男は40代ぐらい、体育会系のような外見の男で銀コーティングされた日本刀を信長に振り下ろしながら叫んだ。


「私が日本を解放する!!死ね傾奇者(うつけ)!!」


信長は剣を止めずに男を軽蔑の目で睨んだ。


剣は信長を切らなかった。その前に別の銀コーティングされた日本刀に止められた。弥生の日本刀だった。


「勘違いしないで裏切り者の田森。私がお前の相手だ、覚悟するがいい。」


赤い目になった弥生は叫んだ。


「信長の前で、女、お前を滅ぼしてやる!!」


と怒りを込めながら田森が叫んだ。


「やってみろ、無能め。」


弥生は応戦した。


「女は引っ込んでろ、これは日本のための戦い!!異人の血が混じった女の出る幕じゃない!!」


田森が言った後、口を割り3本の触手(テンタクル)牙(ファング)を出した。


「女、女、うるさいんだよ、無能め。私が引導を渡してやる。」


弥生は田森を威嚇した。


田森の怒りは爆発した。小娘にコケにされたことは我慢ならなかった。


人間ウォームの目が追えない速さで2人は剣を交えた。


田原は一歩遅れたと感じた。


飾りのはずの田森に弥生を奪われたと思った。そのことで怒りが込み上げてきて、2人が戦っているところへ向かった。


「田森、貴様、どけ!!」


と叫んで、銀コーティングされたサバイバルナイフ2本を抜き、2人の間に割って入ろうとした。


「邪魔するな、副官さん。」


日本刀を握っている若い茶髪の男に止められた。


「お前こそ、俺の邪魔するな雑魚!!」


と田原は叫んだ。


「雑魚かどうか、試してみるがいい、永遠の二番手さん。」


と新一は皮肉った。


田原は怒りのあまりに口が割れて、2本の触手(テンタクル)牙(ファング)を一瞬出し、また戻した後、新一と戦い始めた。


小島は牙(ファング)小隊(プラトーン)隊員と転化人(インヒューマン)の一般戦闘員に銃を使うなと命令した。


サバイバルナイフ、短剣、ロングソードへ切り替えるように命じた。


信長が連れて来た100名と自分が率いる250名、比べてみたくなった。


信長の突撃隊は全員、銃を置いて、刀を抜いた。


「全員叩き切れ!!」


と森が命令した。


刃物がぶつかり合う音が広い入り口ホールに響いた。


森は小橋と呼ばれている男性と一騎打ちになった。


「侵入者は排除する。」


と小橋。


「裏切り者は成敗する。」


と森は応じた。


2人の日本刀は大きな音を立ててぶつかり合った。


大統領は怒っていた、周りが見えないほど怒りを感じていた。


自分を滅ぼそうとした男が日本に来ていた、日本の主(マスター)と手を組んで、


攻撃してきた、転生後の人生をずっと血入り治療タンクで休めなければならない体にした


張本人がここにいる。


リベンジするチャンスが巡って来たと思った。


「忌々しい評議会の戦闘員め、食ってやる!!」


と声(テレパス)で叫んだ。


ヘルムートは大統領の前に立ち、ロングソードを握り、構えて、大統領の攻撃を待った。


「やり残した掃除を今日終わらせる。」


と大統領を挑発した。


「我は12年間、成長した、強化もされた。忌々しいドイツ人め、我の糧になるがよい。」


「生ごみは成長も強化もしないよ。腐っていくだけ。」


「貴様!!食ってやる!!」


「やってみろ、腐った生ごみの主マスター」


とヘルムートは更に大統領を挑発した。


大統領は複数の角度からヘルムートへ攻撃をしかけた。彼はそれを全部、瞬間移動能力を使用することなく、かわしていた。


ミナとマモールデがロングソードで転化人(インヒューマン)一般戦闘員を紙くずかのように切っていた。


「弱い、弱い。話にならん。」


とマモールデが怒鳴った。


「確かに、こいつらは弱い。」


とミナが同意した。


その時だった。4人の隊員がサバイバルナイフを手に、2人の前に出て来た。


彼らは両手に銀コーティングされたサバイバルナイフと大きく開いた口から1本の触手(テンタクル)牙(ファング)を出していた。


「こいつら、雰囲気が違うマモールデさん。」


とミナが警告した。


「ああ。気付いた。」


とマモールデは返答した。


4人のうち3人は男性で1人は女性だった。動きは素早く、ナイフと牙で同時攻撃を行っていた。


「こうでなきゃ、応援に来た意味ないじゃない、マモールデさん。」


とミナ嬉しそうに話した。


「ああ。確かに、我々も楽しまなきゃな。」


とマモールデは笑いながら答えた。


「この4人のうち、どっちが多くを討ち取れるかかけてみる?」


とミナ。


「君の泣き面が目に見えるよ。」


とマモールデ。


「長寿者(エルダー)の爺さんには負けないね。」


ミナは挑発した。


「このガキ、長寿者(エルダー)の力を見せてやる。」


マモールデは応戦した。


6人は凄まじい戦いに身を投じた。


信長は立っていた。精鋭部隊は敵と交戦し、圧倒していた。


せっかく起きたのに、暴れ足りないと思った。本来あの小童や裏切り者の元首相を滅ぼしたかったが、弥生とヘルムートに楽しみを奪われたと感じた。


「退屈だ。」


と寂しくつぶやいた。


その時、彼の前に3人の敵、全員女性の隊員が現れた。


全員抜刀していた、各自細長い銀コーティングされた洋風ソード2刀だった。


「信長の首を貰いに来た。」


一番前に立っていた女性が怯むことなく、信長に話した。


信長はゆっくりと彼女を見た、短く切った赤い髪の毛、堀深いが整った上品な顔、虚ろだが明るい青い目。綺麗だなと一瞬思ったが、敵であることを忘れなかった。


「そう簡単に渡せるものか。名を名乗れ。」


信長が彼女に問いかけた。


「私はゼンフィラ。誇り高きチェチェン人の戦士。」


彼女は堂々と答えた。


「遊んでやろう、来い、ゼンフィラ。」


と信長は真剣な顔で話した。


3人同時に信長に攻撃を仕掛けた。信長は笑顔を浮かべた。


「これなら退屈しないな。」


と独り言をつぶやいた。


小島は戦いから少し後ろへ下がった。


会社のトップの預言の通りに動かなければならない。今日は滅ぼしかけられそうなあの男の生き残った一部を本社に連れていかなければならない。あの下品な大統領の代わり、研究部門の実験に使われるため。数年かけて手に入れた、完全にコントロール可能な実験体。


携帯電話がなり、ハンズフリーで応答した。


「はい。小島です。」


「今から10分であの男が必ず負ける、一瞬の隙に必ず回収して。時計を合わせて。」


電話の主が命令した。


「はい、我が主マスター」


と小島が時計を合わせながら答えた後、電話の主が回線を切った。


小島はゆっくりと戦いをかわしながら、田森元首相と織田の切り込み隊長、黒岩弥生が戦っているところへ歩き出した。

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