第22話 ボイスレコーダー

 「危険なので終了です!」

  

 「ちぇっー、まぁそろそろ寝ようかな。実際長旅で疲れたし」


 楓が背伸びをすると服が伸びてボディラインが……なんかポチッとしてた気がするけど、気にしないでおこう。


 「夏樹も疲れたでしょ?」


 「まぁね。水野こそ平気か?」


 「うん。……もし、私が居なくなっても絶対に見つけてね?」


 「あんなの誘拐事件をこじつけた空想の話だよ」


 「そう……だよね。じゃあまた明日ね!」


 3人がそれぞれの部屋へ向かっていく。もう11時か、そろそろトイレに行って寝ようかな。


 そう思って廊下へ出てみる。トイレは2階が男性用になっている。1階も使って良いそうだが女性陣から大反対を受けてそうなった。


 スッキリしたー。


 ガチャ


 「へっ?」


 奥の開けてはいけない部屋から人が出てくる。体格の良い男だが、髪がボサボサで不潔な印象を受ける。


 「お前誰だ?」


 「あ、今日から3日お世話になる夏樹って言います」


 お前こそ誰だよ!?


 「ふーん、どうでもいいけど部屋には絶対入るなよ」


 この洋館はそれぞれの部屋が外から鍵で施錠できるようになっている。謎の男がしっかりと鍵をかけるとトイレへと消えていった。


 だ、だれだったんだ?


 ガチャっ


 部屋へ戻ろうと移動するが、扉が開かない。


 「あ、アレ?」


 「だ、誰ですか!?」


 麗華ちゃんの声がする。


 頭の中がパニックになっていたせいか部屋を間違えてしまったみたいだ。


 「ごめん、俺だよ。考え事してたら間違えてしまったみたい」


 鍵を開ける音がするとドアが開いて部屋着姿の麗華ちゃんが迎え入れてくれる。


 「もう、お化けかと思ったじゃないですか!」


 「ごめんごめん」


 「……怖くなっちゃったんで責任取ってください」


 「せ、せきにん!?」


 「勘違いしないでください! 怖くなくなるまで話し相手になって下さい」


 「なんだぁ、お安い御用だよ」


 麗華ちゃんに招かれて椅子に座る。


 麗華ちゃんはベッドに腰をかけている。部屋の作りは一緒だがぬいぐるみがきっちりと並んでいる。


 スマホにヘッドホンが接続されている。音楽でも聴いてたのかな?


 「何か音楽聴いてたの?」


 「えっあ、あ、あ、そうです! 寝る時にクラシックを聴くんです」


 「へぇ、どんなの聴いてるの?」


 ヘッドホンをつけてみる。


 「へっ!? だ、だめ!!!」


 -れ、れ、れ、麗華愛してるよ-


 ヘッドホンからは愛をささやく俺の声が……あの時撮ったやつか!!


 「あわあわあわあわわ」


 麗華ちゃんが人ってあんなにうろたえられるんだってくらい、うろたえている。


 「あ、あれー何にも聞こえないな」


 -れ、れ、れ、麗華愛してるよ-


 黙っててくれー!!


 「そ、そうですか!」


 脱兎の如くヘッドホンを回収する麗華ちゃん。


 「……本当になんにも聴こえてませんか?」


 「う、うん」


 「はぁ……良かったぁ。もう、怖くないので帰っていいですよ。おやすみなさい」


 「あ、あぁおやすみなさい」



 夜寝る時に聴いてるのか……なんだか嬉しいような恥ずかしいような。


 なんだかんだいって結構ドタバタした1日だった。今日も疲れたし、明日からまた忙しくなるから、今度こそ寝よう。


 ベッドに入って布団に入る。




 深夜。なんだか疲れてるのに、慣れない環境だったせいか途中少し目が覚めてしまった。


 「………」


 なんだか女の人の声と物音がする。上の階かな?やっぱり大学生達は遅くまで起きてるんだなぁ。


 そんなことを考えていると再び眠気に襲われる。


 明日は何をしようか。




 しばらくすると目覚ましで目が覚める。


 まだ寝ぼけた頭に気合いを入れると扉を開けてホールへと向かう。


 「おはようございます」


 みんながホールで神妙な顔をしている。


 「何かあったんですか?」


 「夏樹先輩」


 麗華ちゃんそばに寄ってくる。









 「水野先輩が居なくなりました」





✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎



いよいよ事件が動き出します。



ここまで読んでいただきありがとうございます!

コメント、レビューを書いて頂けるととっても嬉しいです!


それではまた明日!


いぬお

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