第2話 私を離さないで テクスト分析
こんばんは、ナナイです。今回は、再度、カズオ・イシグロの私を離さないでのテクスト分析をします。
先行研究にはあたっておらず、稲葉振一郎先生の書評しか読んでないです。すいません。
あらすじの簡単な要約にも、前回の書評はなってるので、そのままコピペします。以下です。
ネバーレットミーゴー……オー、ベイビー、ベイビー……私を離さないで……。私を離さないでという作中の歌です。少女時代、主人公のキャシーがこの歌のテープを聞きながら踊り、臓器提供の施設を作ったマダムは驚き悲しみます。これは臓器提供のためだけに創られたクローンの運命を描いている本なのですが、主人公のキャシーはこの歌を「ある女の人がいて、赤ちゃんを産めない身体だと言われていました。でも奇跡が起こって、赤ちゃんを授かります。それでその人は嬉しくて、赤ちゃんをしっかり抱き締めます。でも恐れもあります。何かが起こって、この赤ちゃんから引き離されるのではないか。それで、ベイビー、ベイビー、私を離さないで……と歌うのです。」と解釈します。臓器提供のため人類の都合で子供すら産めない身体のキャシーは、ヘールシャムという臓器提供のクローンに教育や仲間との思い出を与える施設を作ったマダムに「きっと恋人を抱いてるつもりだと思ったのでしょう。そして、マダムとわたしたちの関わりがトミーの言う通りならーー恋人ができたとき、提供開始の猶予を認めるかどうかを決めるのがマダムならーーあの状況も納得できるような気がします。いつもわたしたちに冷淡な視線を向けているマダムでしたが、あんな場面に出くわしたら、さすがに心を動かされたということなのでしょうか。……。」
それに対してマダムは「新しい世界が足早にやってくる。科学が発達して、効率もいい。古い病気に新しい治療法が見つかる。すばらしい。でも、無慈悲で、残酷な世界でもある。そこにこの少女(キャシー)がいた。目を固く閉じて、胸に古い世界をしっかり抱き抱えている。心の中では消えつつある世界だとわかっているのに、それを抱き締めて、離さないで、離さないでと懇願している。私はそれを見たのです。」と答える。
キャシーの身体は臓器提供のために作られ、ヘールシャムの保護者からも不気味がられ、魂すら疑われますが、ヘールシャムの家族、仲間達との思い出、恋、子供を産んでみたいと願っているという可能性は奪えません。マダムはいずれ臓器提供のクローンすらいなくなり、クローンの臓器提供よりさらに効率的で残酷な科学の世界に取り残されたキャシーを見ます。
なくしたものがもどってくる、ノーフォークに救いがあるのかもしれませんが、キャシーはそれを思い出と見るだけで、臓器提供という死の使命にやがて向かっていくところで物語は終わります。
身体は奪えても思い出は消えないというキャシー。臓器提供のたび記憶を失っていくルースを見るとキャシーの運命は絶望しかありませんが、ノーフォークに彼女達が生きている気がしてなりません
稲葉振一郎先生の書評はこちらhttps://shinichiroinaba.hatenablog.com/entry/2022/04/27/194634
今回、私は、人間が、(クローンの)人間を家畜にする物語として読みました。
アニマルライツセンターから
https://arcj.org/issues/farm-animals/dairy-cow/akane/
今回は、これをみて、私を離さないでを思い出しました。彼らは家畜だったのだろうか?
私を離さないでは臓器提供のためだけに創られたクローンの運命を描いてる本です。臓器提供のため人類の都合で子供すら産めない身体。臓器提供のクローンに教育や仲間との思い出を与える施設を作ったマダムですが、結局はヘールシャムを卒業すると、子供を産む恋も、夢も許されない。人間扱いされない。
ヘールシャムにいる時はまだ家畜ではなく、人間扱いされていましたが、結局はアニマルライツセンターのリンク先の乳牛のように──劣悪な環境で動くこともできず、骨が見えてもまだ牛乳を搾り取られ、最後には肉として殺される──
人類のためにクローンとして生まれ、臓器をむしり取られ、思い出すら失っていく。彼らは人間のための家畜なのだ。
ヘールシャムの保護者からも不気味がられ、魂すら疑われる。クローンの彼らは何度も人間の証明が求められてる気がします。
ちょっとまだ読みが浅い気がするので、時間がある時、再読し、暇があれば先行研究にもあたりたいと思います。ではでは。
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