第7話 家族との再会

 婚約解消の手続きが終わると、数日後には辺境伯爵家の領地へと出立していた。


 急なことだったので実家のライネ家からの迎えが間に合わず、その代わりに王家が丁寧に送り届けてくれた。


 王太子殿下が私の事を案じてくれた結果だ。


 最後まで丁寧に接してくれて、やはり責める気持ちは生じなかった。


 これからは、私が好きなように生きればいい。


 それができる健康な体になったのだから。


 健康になったと言っても体力は無くて、領地に向かうまでの道中で何度か体調が悪くなり、随行してくれていた王家の医師に何度もお世話になっていた。


 この先どうやら、遠くに旅行するのは無理そうだと、帰路の間に悟った事だった。


 六年ぶりに生まれた家に戻ると、屋敷の前では家族総出で出迎えてくれた。


 多くの使用人が立ち並ぶ中、馬車から降りた私を真っ先にお父様が抱きしめてくれた。


「ユーリア。よく戻ってきてくれた!」


 お父様はむしろ、婚約解消を喜んでくれていたようだ。


 家族ともずっと離れ離れだったから、私に会えた事を喜んでくれるのは、私もとても嬉しかった。


 六年間一度も会えることが無く、手紙のやり取りもあまりできなかった。


 大好きな家族に会えない寂しさを、王太子殿下の優しさが埋めてくれなかったら、闘病生活は耐えられたものではなかった。


「お父様……お母様も、お兄様も、ご心配をおかけしました。そして、王家との婚約が無くなった私を温かく出迎えてくれて、ありがとうございます」


「貴女が元気になってくれたことが何よりよ。私の命よりも大切なユーリア」


 お父様に代わって、今度はお母様が私を抱きしめてくれた。


「お前の事は、この先もずっと俺が守る。お前は何も気にせずに、家で安心して過ごせばいい」


 騎士よりも逞しいお兄様の言葉も、嬉しかった。


「さぁ、疲れているだろう。ユーリアの部屋は整えてある。体を清めて、ゆっくり休みなさい。城から来た方々は、私が対応するから」


「ありがとうございます、お父様」


 家族の温かい言葉に背中を押されて、久しぶりとなる実家の自室で疲れた体を癒せていた。

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