第52駅 庭の完成と新兵器 ~セントラルシティ~

 弾丸調査を終えセントラルシティに戻ってくると、なんと作成中だった宮殿の庭が完成していた。

 そういうわけで、作庭を担当した庭師のブラックさんに案内して貰っている。


「概要をご説明しますと、私が考案した風景式庭園をベースに、グラニット王国らしさを取り入れています。南部大陸原産の木や花を植え、南部大陸の自然の特徴を参考にしました」


「私、ブラックさんが手がけた貴族の屋敷の庭を何度か見たことがあるんですけど、確かに所々違いますね」


 宮殿から庭に出るとすぐ、巨大な池が目に飛び込む。

 この池は宮殿の窓からもよく見えるんだけど、この池の周りにはヤシの木が多く配置されており、所々南部大陸産の花を植えていた。

 さながら、優美な南国リゾート地の湖の様な印象を受ける。


 アンによれば、風景式庭園は池の周りには芝をベースに花や木を配置するんだけど、普通はここまで木の数は多くないらしい。

 この点が、ブラックさんの言う『グラニット王国らしさ』なんだろう。


 次に訪れたのは、宮殿から少し離れた所にある森だった。


「この森は、南部大陸らしく北部大陸の庭よりも木を密集して植えました」


「ホントか~? エディの感覚だと、もっと木があつまっていたと思うのだー!」


「これ以上密集させてしまうと、死角が多くなりセキュリティ上問題を抱えてしまいますから。その代わり、目の錯覚や人が受ける印象をフル活用して密林感を演出しました」


 確かに、この森は結構見通しが良いけど、木から受ける圧迫感のせいで密林っぽさが出ている気がする。

 それによく見ると、この森に使われている木は南部大陸の様々な土地で生えている、色々な種類の木だった。

 ある意味、南部大陸の木の植物園、といった感じ。


「主な庭の施設は以上になります。まだ使える土地はありますが、それは将来の拡張のためにあえて手を付けませんでした。何かご質問は?」


「特には。けど、こんな大工事、大変だったんじゃない? 特に池なんて掘るだけでも大変そうなのに……」


「ご心配には及びません。私のスキルを活用しましたので、見た目よりも労力はかかっていないんですよ」


 説明によると、ブラックさんは『作庭』というスキルを持っていて、土、水、植物を自由に操作することが出来るらしい。

 ある程度地形を変化させることも出来るため、名前の通り庭作りにピッタリのスキルなんだとか。


 そんなこんなで、宮殿の庭の説明は終了。アン曰く『他国の方にも自慢できる庭』らしい。

 そして庭の完成をもって、宮殿の全ての施設は完成した。




 ある日、僕達はリットリナさんに呼ばれたので彼女の工房にお邪魔していた。


「ようこそ、皆さん。早速だけど、みてほしい物があるんだ」


 リットリナさんの手に持っていたのは、銃だった。どことなくアサルトライフルに酷似している。

 そしてリットリナさんは設置していた的を狙って引き金を引いた。すると――。


 パパパパパパパパパッ!


「れ、連射してる!?」


 この世界、先込式の単発銃しか存在しない。だから連射出来る銃がどれほど技術的に高度であるか、よくわかる。


「ほら、この前陛下が戦闘用車両を提供しただろ? そこにあった銃を研究して再現してみたんだ。他にも色々研究中。……まぁ、銃器についてはメンテナンスが従来の物よりも面倒になったけど……」


「いいのではないでしょうか? まだ我々しか持っていない武器である内は最高のセキュリティにもなります。例え奪われても、そのうち敵は使えなくなってしまうのですから」


 確かに。アンの言うとおり、敵に奪われても十分に使わせることが出来ないというのは長所になり得る。


「見せたい物がまだあるんだ。こっちにどうぞ」


 案内されたのは、僕が貸した研究サンプル用の車両や、リットリナさんが開発した車両を保管しておく車庫だった。


「この二両さ」


 見せられた車両は、車両の土台に巨大な近代式大砲を載せたものと、ぱっと見は普通の車両のものだった。


「大砲の方は、機関車に引かせて運用する。射程・威力共に既存の大砲を遙かに凌駕しているよ。大砲の下は転車台になっているから、三六〇度あらゆる方向に発射できる」


「トシノリの戦闘車両もカッコよかったけど、こっちもカッコいいのだー!!」


「戦況を一変させる可能性を秘めていますね。魔力鉄道の存在によってこういう兵器の運用も可能になった、ということでしょうか」


 これ、いわゆる列車砲かな。

 前の世界ではほとんど姿を消してしまったけど、第二次世界大戦までは多様されていたらしい。


「もう一両の車両は、陛下から貸して貰った戦闘車両の三分の二を模したものだね」


 リットリナさんの言うとおり、もう一両の普通っぽい車両の内部は、戦闘車両の『作戦司令室』そのままだった。

 戦況を把握し指示を出す部屋と、会議室が設置されていた。

 武器庫が無い分、それぞれの部屋は広く取られている。


「残念ながら、オリジナルの戦闘車両のように武装を一緒に格納するのは出来なかった。だから列車砲とこの『戦闘指令車』に分けざるを得なかったんだが……。

 ちなみに、各種通信機は当然設置済みだよ」


 実は、駅の事務室にある電話や、僕の車両に設置されてあるインターホンを参考に通信機がリットリナさんの手で開発されており、すでにグラニット王国内で使用されている。

 そもそも、鉄道の運行に通信は不可欠だし。


「なるほど。ということは……」


「戦闘指令車の配備を行いたいですね。バルツァー皇国と戦闘を行っている国に販売してもいいかもしれません」


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