第50駅 バルツァー帝国の侵攻 ~スタッキーニ王国北の小国群及びセントラルシティ~
~スタッキーニ王国北の小国群~
バルツァー帝国が南進を開始した。
これ自体は前々から予測されていた事なので、特段驚く事は無い。
だが、攻められる国からすれば、たまったものでは無かった。
「ひるむな! 国を守るんだ!」
「魔法で陣形に穴が空いた! 誰か埋めてくれ!」
「援軍はまだか!?」
一応スタッキーニ王国とは防戦条約を結んでいて、バルツァー帝国が侵攻すれば手を貸してくれる事になっている。
だが、スタッキーニ王国とは比較的近いとはいえ距離があり、大軍を向かわせるのに時間がかかる。
バルツァー帝国もその点は把握しており、スタッキーニ王国の援軍が来る前に踏み潰す算段だった。
だが、その算段は今回、脆くも崩れ去ることとなる。
「全軍、友軍を守れ! バルツァー帝国の侵攻を許すな!!」
『オーーーーッ!!』
従来の常識よりも遙かに早く、スタッキーニ王国が援軍に駆けつけたのだ。
「スタッキーニ王国軍だと!? 早すぎないか」
「動揺するな! 大軍がこんなに早く到着するはずが無い。少数の先遣隊だろう!」
「そんな、数が多すぎる! 明らかに本隊レベルだぞ!!」
駆けつけたスタッキーニ王国軍は、明らかに大軍と呼べる人数だった。
その常識外れの速さと量に圧倒され、バルツァー帝国軍は予想以上の大幅な戦力の消耗をさせられた。
結果、バルツァー帝国はほとんど戦果を得られぬまま撤退するハメになったのである。
~トシノリside~
「ゆうべはお楽しみでしたね」
「からかわないでよ、ブルネルさん」
宮殿で生活を始めた翌日、僕は朝一番にブルネルさんからそういじられた。
理由は簡単で、不定期でアンとエディがやっている『子作りに馴れる作戦』をやられたから。
この宮殿の国王の部屋、つまり僕達の部屋は設備面でも立派で、部屋の中にトイレ、洗面、さらには広い風呂もついている。
この世界、燃料を使うにしろ魔道具を使うにしろたくさんのお湯を沸かすのは手間がかかるため、風呂の設備を持っているのは公衆浴場かお金持ちだけ。つまり、僕達はこの世界基準でかなり豪華な設備を手に入れている。
ただ、風呂の設備を作ったリットリナさん曰く、魔道鉄道の技術を参考にしたため従来品よりも格段にコストが安くなったとか。
それでも個人のスペースにしては広すぎるから、かなり贅沢な風呂だとは思うけどね。
話がそれたけど、まぁその風呂で三人一緒に入って、いろいろイジられたし僕の手を掴んでいろんな所にタッチさせられた。
寝るときはキングサイズのベッドが一台だけだから一緒に寝るんだけど、その時も薄い寝間着で密着――というかこすりつけられながら寝ていた。
「ですが、我々家臣や国民はそれで安心できるのです。将来お子様をお作りになられるという確証にもなりますし、グラニット王国の将来は安泰だという証でもあるのですから。
それに、陛下も嫌では無いのでしょう?」
「それは、確かに……」
そう。ここまでうんざりしているかのように語ったけど、心の底から嫌とは思っていない。むしろ楽しさやうれしさもあるんだけど、なぜか素直に喜べない。
なぜ自分でもこんな説明しづらい感情になってしまうのか、よくわかっていないんだよね……。
「ところで、ブルネルさんはそんな話をしに来たんじゃないでしょ? 執務室がこんな状態なんだから」
現在、三階にある国王執務室は荷物で溢れかえっている。
今まで駅の事務室や仮設王宮を執務室代わりにしており、現在王宮が完成したことで引っ越し作業を行っている。
そのため、部屋の中は散らかっている状態なんだ。
ちなみにこの状態は、国王執務室だけでなく三階までの公共空間は全て同じ状態らしい。
四階以上の私的空間は、内装工事の際に最優先で家具の搬入も終わらせてしまっていたため、面倒な引っ越し作業はほとんど無く、すぐに生活出来るようになっていた。
「そうでした。先日、バルツァー帝国が小国群へ向けて南進を開始。ですが駆けつけたスタッキーニ王国の援軍もあり追い返したそうです」
「その時に重要な役目を担ったのが、魔力鉄道なんだね」
現在、スタッキーニ王国、メイデン共和国、スエノブ皇国から魔力鉄道のノウハウを学ぶための人を受け入れている。
ただ、バルツァー帝国絡みであまり時間をかけるわけにはいかず、座学はそこそこに、ほぼ実地訓練でやっている状態らしい。
グラニット王国の鉄道員を補助しながら、自身でも実際に仕事をこなして技術を身に付けてもらうんだって。
今回スタッキーニ王国の戦力を運んだのも、実地訓練中のスタッキーニ王国の人なんだそう。
「はい、その通りです。ですが、バルツァー帝国との戦いはこれからでしょう。今回の失敗を受けて、バルツァー帝国がどのような手を打ってくるか――」
「まずはバルツァー帝国の出方を探り、それに対応する、というわけだね」
願わくば、このままおとなしく引き下がってくれれば良いんだけど――その可能性は限りなく低そうだなぁ。
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