永遠の時間

かおりさん

第1話 『永遠の時間』 第一章

 あの日の夏。今も憶えている。


「君に永遠の時間を見せてあげる。」

彼はそう言って、私を海へ連れていった。


 彼は砂浜に座り、ポケットから砂時計を取り出した。上下のキャップを外して、砂浜の砂を入れた。


「ほら」


 砂時計の砂が落ちてゆくのを私に見せて、砂を握りしめて手品のように砂を落としていく。


 砂時計からこぼれた砂は、砂時計と重なり風に舞ってゆく。


「次は君の番だよ」

彼はそう言って、日の光に眩しそうに笑った。


 永遠の時間。


 私は遠く水平線を見つめて、「あの波は海に消えてはまたすぐに波を造るの。永遠の時間に。」


 彼は顔を真っ直ぐに水平線へ視線を向けて、

「あぁ、そうだね。」と言い、呼吸と同じように波音を重ねて、一つひとつの波を見送っていた。


 私は彼の横顔を見ていた。彼は私へと向きを変えて、「これは僕たちの永遠の時間だね」と私を見つめて言った。


 私たちの時間。永遠の時間。

この吹いている風も、空に流れゆく雲も、永遠の中にあって、私たちの時間に時を永遠に刻んでゆく。


 彼は砂時計に砂を詰めてキャップをした。

「これで永遠の時間が見えるよ。君と一緒にね。」そう言って、私に優しく笑ってくれた。



 そのあとすぐに、彼は私の前から姿を消した。

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