第41話:連携攻撃①
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一般的な「連携攻撃」とは、複数の戦士がそれぞれの攻撃を調和させ、敵に対し有利な一手を築き上げる戦術を指す。
単なる戦闘技術の組み合わせとは異なり、互いの意図を読んだ上で行動することで、個々の力を遥かに超えた効果を生み出すことができる。
このため、熟練の連携は訓練を重ねた者たちの間でのみ可能とされている。
しかし君が目指す連携は、一般的なものとは異なる。
君の言う連携は、「魔力の交錯と精神の同調」を通じて実現するものだ。
それはただ動きを合わせるだけでなく、互いの魔力を触れ合わせることで、それぞれの精神が瞬時に共鳴し合う状態を作り出す技法だ。
意識が一体となり、敵の一挙手一投足に対する反応が自動的に共有され、連携の精度が飛躍的に向上する。
この技法はライカードにいまなお君臨している偉大なる大魔術師が考案した技法で、彼の者がかつて邪悪な魔導士であった頃に実用化に至った。
邪悪な魔導士は人ならぬ魔の者どもを従えていたが、本来、そういった闇の種族は人間などに従ったりはしない。
一次的な契約関係を結ぶ事はあるにせよ、油断をすれば逆に餌食となってしまうだろう。
だが大魔導士の膨大な魔力によって強制的にその精神に
それから紆余曲折あり、その魔導士が光の道を見出してライカードの為にその力を役立てる事を決めた際、かつての闇の技法は光の技法として生まれ変わったのだ。
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そのあたりの事を君は手早く仲間たちに説明をした。
「魔力を使って精神の同調、かあ……でも私、魔法なんか使えないよ?」
キャリエルが心配そうに言うと、君は魔力は誰にでもあると説明した。
でなければ転職して魔法が使える様になったりはしないからだ。
「転職ってそんな、これまで剣士として生きてきた人が、明日から魔術師として生きていくなんて出来るわけないじゃん」
キャリエルはそういうが、少なくともライカードでは出来る。
とはいえ、職業──すなわち生きる道を強引に変えるのだから、文字通り死ぬような思いをしなくてはいけないのだが。
先ず訓練の過程で“死”を覚悟しなくてはいけない。
というより死ぬ──壮絶なしごきによって!
そこから "訓練所" の秘中の秘である様々な薬物や術式により精神と肉体が職業にふさわしい形に再構築される。
このショックが精神と肉体に与える影響は凄まじく、肉体年齢は大きく進み、更にそれまで積み重ねてきた研鑽──例えば筋肉などもすっかり落ちてしまう。
大魔導士と言えども、まあ少なくとも半分は魔術を忘れてしまうだろう。
それを聞いたキャリエル、ルクレツィア、モーブの様子は、まあ言わずもがなであった。
ともかく、と君は話を戻す。
魔力は誰にでもある以上、この "特別な連携" も出来なくはないのだ。
◆
君たちは周囲を警戒しつつ、先へ先へと進んでいた。
現在の階層は第六層の下層だ。
目的は下へ向かう階段、ないし手段を探す事である。
だがついさきほど、新たな目的が出来た。
それは──
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前方の薄暗がりからひたりひたりと歩いてくる足音が聞こえてくる。
君は一行を制止させ、待ち受ける形を取った。
「魔物、かな」
キャリエルが固い声で言った。
薄暗い闇の奥から姿を見せたのは、一人の騎士然とした出で立ちの者だった。
肩口には二羽の鷲が向き合う紋章が刻まれている。
「やっぱり、王国騎士も……」
キャリエルが小声で呟き、唇を噛んだ。
殺気にも種類がある。
鋭く鮮烈な殺気や、海の底を思わせる様な昏くも深い殺気──発する者の気質によってその姿を千変万化させる。
然して、この騎士から発されるそれは腐臭を纏い、粘りつき、重く淀んでいる。
モーブはこの騎士の気配に、腐敗した傷口から湧き出した無数の蛆が蠢く光景を幻視した。
聖騎士の本能は、この騎士は魔なる存在、邪に連なる者であると断じ、自然と手が剣に伸びるが──
その手をルクレツィアが制止する。
あろうことかルクレツィアは、口元に笑みさえ浮かべながら「ご機嫌よう」と声をかけたのだ。
君はその姿を見て、満足そうに頷いた。
しかし騎士が返事をせず、無言のまま鋭く剣を抜き、駆け出すのを見て──
それならそれで良しと君はモーブの肩を叩き、直接魔力を流し込む。
先ほどの魔騎士には劣るがと君は思うものの、最初の
ちらとモーブの方を見れば、モーブはまさに驚愕といった風情で君に視線を向けていた。
それも当然だろう、君が何を試そうとしているのか、それを成すには腕をどう動かして、脚でどう機動すればよいのか。
言葉を交わしていないにも関わらず、そういった事がはっきりと分かったからだ。
もし
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本編とは関係のない独り言です
ワードナ……アレイドアクション……
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