第23話:再戦の誓い
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ルクレツィア、モーブの連携の完成度は高い。
それは二人の関係性から見ても当然の事だ。
しかしキャリエルがそこに混ざる事でノイズとなる…事はなかった。
彼女は元はソロ探索者だというのに、案外にも動けていたのだ。
彼女の特異な能力が関係しているのだろうな、と君は思う。
考えてみれば故郷の仲間達は特異な能力と言うものを持つ者は誰一人としていなかった。
もちろん、種族の基本特性として備えている能力こそはあったが、それはまた別の話であろう。
君も含めて、故郷の者達の実力者は皆己の屍を幾重にも重ねて階梯を昇っていったのだ。
そういう意味でもこの世界は興味深いと君は考える。
世界の理が違うのであれば、あるいは自身にも神秘の力が備わるかもしれない、
君はそんな期待で胸が躍るのを感じた。
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そうしている間にも、異形へのダメージは蓄積されていった。
君が先んじて放った攻撃が思った以上に効いているのかもしれない。
満を辞して登場した割には、と君は内心呆れなくもないが…
ともかくこの時点で見るべきものは見た、と判断した君は決めに入った。
背後で膨大な魔力が膨れ上がったのを感じたルクレツィアはモーブとキャリエルに鋭い警告を発し、下がらせた。
君は内心でルクレツィアの顎を指先でいじってやる。
これは彼女がまるで忠犬の様に君に付き従うので、なんとなく想起された妄想である。
君はゆっくりと異形…囁く者へと拳を突き出し、厳かに魔法を解き放った。
一条の雷撃が神鳴る槍と化し、囁く者へと伸びてゆく。
それは殆ど自然界の落雷に匹敵する電圧だが、恐るべきはそのエネルギーが尽きるまでその場に留まり続けるという性質である。
自然現象としての落雷であるならば、運がよければ生存できる可能性もあるにはあるが、君の使用した“神罰”は魔法が内包するエネルギーが枯渇するまで敵に電撃を流し続ける。
それも極めて高電圧の電撃をだ。
電気の強さは電圧と電流で決定される。
電圧が電気の流れる通路の広さを意味し、電流はそこを流れる電気の量だ。
例えば静電気などは電圧こそ高いが、電流が低いため人が死んだりはしない。
しかし電圧が低くても電流が高ければ人は死ぬのだ。君の使った魔法は電圧も高ければ電流も多い。
結句、何が起こるかといえば死と破滅以外には無い。
それは囁く者の様な異形とて同じ事であった。
醜い緑の肥体を余す所無く電撃が焼きつくし、残ったものは一塊となった灰のみであった。
しかし君の聴覚はかの存在が消え去る前に残した妖しげな嘲笑を捉えていた。
恐らくは分体の様なものだったのだろう。
だが君の勘は囁いている。
近い将来、再び奴と相対するだろう事を。
まさに望む所であった。
悍ましい邪悪!
君の、いや君達魔導散兵の使命にして趣味とはそういった邪悪と対峙し、これを滅ぼす事なのだから。
◆
ルクレツィアは絶頂した。
精神的な意味でも、精神的な意味でも。
──ああ!わたくしは我が君の拳より放たれた神の怒りの具現を見ました。邪悪が神の裁きにより焼かれ、悶え、苦しむ断末魔の悲鳴はなんという甘美な響きを伴うのでしょうか。それを成さしめた我が君にこそこの身全てを捧げるに相応しい。あゝ……この目にこの胸にしかとその光を刻み付けましょう……たとえこの身が朽ち果てようとも決して忘れることのないように……ああ、我が君よ……この身を焦がすような狂おしい程の熱情を、信仰を捧げます。尊くも麗しき我が君…わたくしは貴方様に信仰、そして操をも捧げたい……ふう
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