第1話 神獣と殿下
昔、夕帝国にとある皇子がいた。皇子は次の皇帝に選ばれる予定だったが、生まれながらに体が病弱で、弟に皇太子の座を譲った。皇子は正義感が強く、善良で優しい心の持ち主であった。せめて、命だけでも永くと皇帝は願い、天に祈りを捧げていた。そんな皇帝の思いに応えようと、とある神獣が皇帝の前に現れた。姿は鹿のような羊のような不思議な体をしていて、頭には金に輝く角が一本生えていた。神獣は、皇帝にこういった。
「私は神獣である。そなたの思いを叶えるため、私は人に姿を変え医者として皇子のそばにいよう。そうすれば、儚げな命も少しは永くなるであろう」
皇帝は神獣に感謝の意を示し、皇子の下で何不自由なく暮らせるように準備をした。
その日の夜、皇子は皇帝に呼ばれた。傍らには医者に姿を変えた神獣がいた。
「父上」
「息子よ、そなたに新しい医者を付けようと思う。かなりの名医だ。そなたの具合も少しは良くなるであろう」
しかし、皇子は皇帝にこういった。
「父上。お気持ち、感謝いたします。しかし、私の命が短いことは仕方ないことでございます。私は父上の皇位を継ぐつもりはありません。私の事より、民のことをお考え下さい」
「民のことも考えている。もう医者は呼んでしまった。とにかく、その先生の言うことをよく聞き養生することが今、そなたがやるべきことだ。先生、どうか息子をお願い致します」
皇帝は傍らにいる神獣にそういった。神獣は一礼して、こういった。
「陛下のお気持ちに応えるように努力いたしましょう」
神獣は皇子にも一礼し、挨拶をした。
これが不思議な医者と皇子との出会いであった。
夕帝国物語 翠幽月 @long-sleep
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