lie to truth

しろい

プロローグ

(どうしてこうなったんだ)

 朔月さくづきとむらは必死に走っていた。


 周りはどこを見ても草が生い茂っており、立派な木々もある

昼間に来ていたら森林浴にぴったりだっただろう。


 遠くから自分とは違う足音が近づいているのを感じ、とむらは後ろを振り返る。


 平和な国では、ほとんど見ることがないような軍隊の装備を着込んだ人達がこちらに向かって着実に距離を詰めてきている。


肺が締め付けられるような感覚になり、こっちはこれ以上速く走れそうもない


(このままじゃまずい!)

 とむらは草むらの中に飛び込み、その先の川沿いに出た。

 そこにはちょうど人ひとりが隠れられそうな岩の陰があり、急いでそこにしゃがみ込んで頭を抱えてうずくまった。


「こっちに逃げたはずだ探せ!」

「こちらでは見つかりませんでした」

「必ず見つけ出すんだ!例のものを見られてみすみす逃がしたらボスに申しつかない」


 近くまで足音が近づいてきたがどうにかまくことができたようだ。

 足音が去っていったところですこし岩の陰から覗いてみたが、フェイスマスクもつけているみたいで顔の輪郭もろくにわからなかった。


 とむらは一息ついて、そして思い返す。

 自分の日常にひびが入った

 あの日のことを。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る