最強パーティーに捨てられゾンビになった俺、魔王から貰ったチートスキルで復讐を誓う

アカバコウヨウ

プロローグ 魔王陥落

 場所は魔王城。

 その一室――地下にある拷問部屋だ。


「あ、あたまバカになりゅ……も、もう嫌……もう嫌じゃぁあああああ!」


 と、聞こえてくるのは少女の声だ。

 美しい銀髪ロングの髪の毛、それと同色の澄んだ瞳。

 さらに特徴的なのは、その頭部に生えた漆黒の二本角。


 少女の正体は魔王だ。

 この城の主にして、魔物達の王。

 決して触れてはならない高貴な存在。


 だがしかし。

 その存在も今では――。


「あっ……も、もう、ゆる……して! あっ……あ、あたまおかしく、なりゅ……っから、許して欲しっ……のじゃ!」


 と、四つん這いの形で床に四肢を固定されている。

 ゾイはそんな少女へと言う。


「頭は最初からバカだっただろ……それにいけないなぁマオ。僕の事はなんて呼べって教えた? これはお仕置きが必要だね」


「ご、ご主人様! ご主人様じゃ! 呼んだから! 呼んだからもう我の事を許してほしいのじゃ! もう我は――」


「許すぅ? 違うだろマオ。僕の奴隷ならなんて言えって教えた?」


「ひぅっ……ほ、ほ……しい」


「なに?」


 と、ゾイはゆっくり首を傾げる。

 すると彼女は、怯えた様子でゾイへと言ってくる。


「ほ、欲しい……我はゾイのが欲しい! もっと攻めて、我をめちゃくちゃにして欲しいのじゃ! ほ、ほら言った……言ったじゃろ? 言ったからもう――」


「ぷっ、ぷはははははははっ! ちょ、本当に言ってるよこの雌犬! やめるわけないだろ……バカなのか!? おまえが今まで僕にしてきたことのお返し、今全部してやるから覚えておいてくださいよ魔王様ぁ」


「ひっ……い、いや……嫌じゃ、もう嫌じゃ!」



      ●●●



 時はあれから数時間後。

 場所は魔王城、玉座の間。

 現在、ゾイはそこにある玉座へと腰掛けていた。


「ちょっと僕も疲れたな……」


 けれど、それは有意義な疲れだ。

 今思いだしても笑える。


(マオの奴、普段は強気で偉そうなくせに。途中から泣きながら、何度も僕に懇願してたな『もう嫌じゃ~』って……笑える)


 それになにより。

 あのマオを、精神的に追い詰めてやれたってのが一番の要因だ。


(今はゾンビ共にマオを与えて、好き放題させているけど)


 さてさて。

 これからどれほど、精神が崩壊していくか楽しみだ。


「マオはあと三日くらいあのままにするとして……次はどうするか」


といっても。

 ゾイは内心、すでにすることを決めていた。

 それは。


「次はあのクソビッチだ。僕の尊厳を散々踏みにじって、しまいにゴミよろしく置き去りにすることを、最初に提案してきたあの女――あいつが建てた国を壊してやる……この僕の手で」


 ゾイはさっそく行動に移ろうとするのだが、どうにも身体が重い。

 あのスキルを使ったとはいえ、やはり魔王との戦闘は負担が大きかったにちがいない。


「少し……寝よう、かな。今日はもう疲れた……」


 こうして、ゾイは玉座で眠りに落ちるのだった。

 かつて彼を置き去りにし、最悪の責め苦を味合わせた三人への復讐。

 それを一人、思い浮かべながら。

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