手術室のオルゴール

 手術室のオルゴールにも赤黒い油みたいなものがいっぱい付着してる。

 

 あれはいったい何なんだろう?

 

 そんなことをじっくり考えている暇はなかった。看護婦さんとDr.ドクターが二人がかりで捕まえようと迫ってくる。

 

「悪い子だ。良い子の脳に取り替えようね」

 

 Dr.ドクターが丸鋸みたいな機械を取ってスイッチを入れるとギュイーーンと恐ろしい音が手術室に響き渡る。

 

 看護婦さんは薬の瓶とハンカチを持って後ろから抱きつこうと狙ってる。

 

 どうしよう!? どうしよう!?

 

 危ない!!

 

 挟み撃ちにしようとする二人を躱すとDr.ドクターの丸鋸で看護婦さんが切られちゃった!!

 

「しまった! 後で治してあげるからね」

 

 Dr.ドクターはそう言って看護婦さんに微笑むと、丸鋸をしまって注射器を両手に持って飛びかかってきた。

 

 注射液が地面にこぼれるとそこから緑の煙が立ち上る。

 

 あんなの絶対に麻酔じゃないよ!

 

 Dr.ドクターの注射器は怪しい液体を撒き散らす! それを美空はとにかく避ける!

 

 そうするうちにDr.ドクターは、勢い余ってオルゴールの鉄板に注射の中身をぶち撒けた。

 

 じゅうううううう!!

 

「ああ! なんてことだ! オルゴールが!!」

 

 Dr.ドクターは頭を抱えてオルゴールの前に立ち尽くしている。

 

 今だ!!

 

 美空は音叉を震わせると手術室にあった酸素のタンクに押し当てた。

 

 すると部屋中に正しいラの音が響いて、Dr.ドクターは気をつけの姿勢で震えだした。ラーーーーと正しく発音しながら。

 

 その隙に部屋にあったゴムのチューブでDr.ドクターをしっかりタンクに縛り付けた!

 

 注射器を拝借して汚れたオルゴールの鉄板にかけると、あっという間に綺麗になった!!

 

 オルゴールからは正しい音程でメロディーが流れ出した!

 

 ふぅ。これでやっと気持ちの悪い音から開放されるね!

 

 美空が狂った音から開放されて、いい気持ちでオルゴールを聞いているとDr.ドクターが目を覚ました。顔が真っ青になってる。

 

「駄目だ! いけない! その音を聞かせるな!」

 

 Dr.ドクターはそう叫んだかと思うと、ぐるぐる顔の渦の中に身体ごと吸い込まれて消えてしまった。

 

 美空は呆気に取られてそれを見ていた。Dr.ドクターのいた場所には小さなゼンマイ鍵が一つ落ちているだけだった。

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