青い青い雲に白い隙間を

エリー.ファー

青い青い雲に白い隙間を

 大人しい子どもだったと思います。

 人を殺すようには見えませんでした。

 品は良かったんじゃないでしょうか。

 誰に聞いたって、良い子だって言いますよ。




 大人しい子ではありましたけど、正義感のある子でしたよ。

 結構、ちゃんと注意もできるし。

 誰かが悪いことをしようと誘っても、それを拒否できるくらいの力強さは持っていましたね。

 勉強に関しては、余り目立った成績はないですけど。

 でも、あの子の良い所って、他にもいっぱいありますからね。

 いやぁ、中々いないんじゃないですかね。あそこまでいい子って。

 もしかしたら、呪われてるんじゃないかって思いましたよ。

 え。

 ほら、いい子いい子って言われ続けて、いい子病になっちゃうって聞くじゃないですか。

 それなんじゃないかって、噂してる人もいますよ。

 でも。

 あの感じは病気っていうよりも、やっぱり呪いに近い感じはありますけどね。




 まさか、あの子がねぇ。

 だって、あんなことしたんでしょう。

 あの子が。

 ねぇ。

 すっごく、いい子だったのにねぇ。

 挨拶はできるし、礼儀正しいし。

 ねぇ。

 あの子、いい子、すっごくいい子。

 本当に、ちゃんとした教育を受けたいい子だったから。

 まさか、自殺なんてねぇ。

 え。

 自殺じゃないの。違うの。

 じゃあ、何をしたの、あの子。

 でも、何にせよ。

 すっごくいい子だったからねぇ。

 圧倒的に、いい子だったからねぇ。




 彼のことですか。

 よく知りませんけど。

 でも、かなりいい子だったそうですね。

 まぁ、私の中ではそのような評価ではありませんが。

 え、言いませんよ。

 それも含めてトップシークレットですし。

 ただ、特筆すべきなのは勉強ですね。

 異常なほど数学が得意でした。

 別に、いいんですよ。国語とか社会とか、あのあたりはできなくても。生きていけるくらいのレベルならいいというだけなので。

 彼は素晴らしかった。

 とにかく素晴らしかったです。




 黒い携帯電話を頂けますか。

 あ、持ってない。

 え、このあたりの人じゃないよね。

 赤いトレーナーだし、スニーカーは黒だし。チューリップハットも被ってるし。

 違う人か。

 じゃあ、いいや。

 ごめんごめん。




 彼はね、自分のことをそこまで好きじゃなかったみたいですよ。

 なんていうか、自己肯定感が低い感じでした。

 どこかで、生きるのが嫌になって自殺しちゃうんじゃないかって思いましたね。

 可哀そうになぁ。

 どういう生き方をすすめてあげればよかったんだろうなぁ。

 彼は、彼以外の存在に憧れていたと思いますよ。




 狂いだす気持ちを押さえつけている。

 そんな少年であった。

 何もかも知っているかのような、澄んだ瞳をしていた。

 体は薄汚れていたが、血にまみれた姿は清潔に見えた。

 少年の形をした悪魔だったのか。

 それとも。

 ただの悪魔だったのか。

 今となっては分からないことばかりだ。




 あたしとあの子の関係は、切れちゃったからさぁ。

 今更、何をしようとしたって無駄なんだよねぇ。

 ごめんねぇ。手伝えることがなくってさ。

 でもねぇ、あの子って勘違いしたまま突き進むくせがあってね。

 そこがちょっと怖かったかなぁ。

 うん、まぁ、そんくらい。





 その少年ですか。

 あぁ、噂になってますよ。

 この町じゃあ、少年に出会わないようにするために、情報収集をしなければなりません。

 もう、何人犠牲になったか。

 でも、最近は少年を見かけませんね。

 どこに行ったんでしょうかね。

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