第5話 エミリアとの狩り

 1週間が経過した。


「よしっ! 今日も大漁だな!」


「はい! カイルさんのおかげです!」


「ははは。ざっとこんなもんさ。さあ、そろそろ帰るか」


「……あの、カイルさん」


「ん? どうした?」


「実は、そのぉ……お願いがありまして……」


「願い? どんなことだ?」


「は、はい。できればでいいんですが……。少しだけ、魔獣狩りに付き合ってもらえませんか? 私も戦いたいと思っていて……」


「ふむ。少しだけなら構わないぞ。怪力スキルを使いこなせるようになれば、エミリアも十分に戦えるようになるだろうしな。大切なことだ」


 怪力スキルの副作用は、力加減が難しくなること。

 使いこなせていないうちは、むしろマイナスに働くスキルと言ってもいい。

 外れ気味のスキルを得てしまったエミリア。

 俺は他人事とは思えなかった。


「そうですよね。きっと使いこなせるようになって、カイルさんのお役に立てるようになりますから。頑張りますっ!」


「ははは。期待しているよ。……っと。さっそくゴブリンのお出ましだ」


「はい! では、いきます!」


 エミリアが剣を振りかざして突っ込んでいく。


「はぁああっ!!」


 力任せに振り下ろされた剣は、ゴブリンに当たらずに地面に突き刺さった。


「あ……」


「ギャギャギャッ!!」


「ふんっ!」


 ゴブリンは俺の剣によって切り裂かれ、倒れた。


「あ、ありがとうございます」


「やっぱり、力加減ができていないな。もう少し力を抜いて……。こんな感じで振ってみろ」


「は、はい……。こうですか?」


「おう。少し良くなったぞ。エミリアの場合、実戦よりもまずは素振りからした方がいいかもな」


「そうします……。それにしても、カイルさんって剣術も凄いですよね。やっぱり剣術系のスキルをお持ちなのですか?」


「いや、違うよ。前にも言ったと思うが、俺のは人に言えない外れスキルでね」


「あ、そう言えばそんなことを仰っていたような……。変なことを聞いてごめんなさい」


「……いや。外れに見えて実は外れじゃなかったから、今はもう気にしていないんだけどね。俺のスキルは『ハキ』っていうんだ」


「ハキ? よく分からない言葉ですね。どういう効果なのですか?」


「ああ、せっかくだし、見せてあげようか」


 追放されたあの日、俺のハキスキルのレベルは3に上がった。

 その後トレント狩りに精を出し、つい先日レベルが4になっている。

 新たに得た力にも慣れていかないとな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る