光よ。君よ。風よ。

エリー.ファー

光よ。君よ。風よ。

「青春とはなんですか」

「そんなものはありません」

「モラトリアム期とはなんですか」

「甘えです」


「青春とはなんですか」

「生きた証です」

「モラトリアム期とはなんですか」

「成長のために必要な期間です」


「青春とはなんですか」

「迷惑そのものです」

「モラトリアム期とはなんですか」

「知りません。興味もありません」


「青春とはなんですか」

「青春に期待でもしているんですか」

「モラトリアム期とはなんですか」

「大した期間ではありません」


「青春とはなんですか」

「思い出です」

「モラトリアム期とはなんですか」

「分かりません。でも、必要なものだったと思います」


「青春とはなんですか」

「苦痛です」

「モラトリアム期とはなんですか」

「聞いたことはあります。でも何なのかは分かりません」


「青春とはなんですか」

「ジャズでした」

「モラトリアム期とはなんですか」

「吐しゃ物の中の宝石たちでした」


「青春とはなんですか」

「僕にとってはピアノでした」

「モラトリアム期とはなんですか」

「分かりません。ごめんなさい」


「青春とはなんですか」

「暗い部屋でした」

「モラトリアム期とはなんですか」

「分かりません。でも、今も続いている気がします」


「青春とはなんですか」

「海でした」

「モラトリアム期とはなんですか」

「どこかで聞いたことがあるんですけど、ごめんなさい分かりません」


「青春とはなんですか」

「僕にとっての青春はグラウンドでした」

「モラトリアム期とはなんですか」

「今です」


 夢を追いかけた時間が過ぎてしまうと、空しさだけが横たわるようになります。正解と不正解で自分を築き上げた結果、立場が分からなくなることもあります。でも、それが青春でしょう。モラトリアム期でしょう。必要不可欠な魂そのものです。

 自戒の念を込めるべきです。


 僕は青春を知らない。

 ずっと家族の介護をしていたからだ。

 家族を見捨てることはできないし、家族も僕に見捨てられたくないと思っている。

 色々と頑張ってきたけれど、実にならなかったことばかりだ。

 青春との距離はどれくらいだろう。

 僕にもあったのかな。

 楽しい時間が。

 僕にもあったのかな。

 誰かと過ごす青春が。


「青春とはなんですか」

「分かりません」

「モラトリアム期とはなんですか」

「遠すぎました。霞んでしまって見えません」


「青春とはなんですか」

「そういう質問によって傷つく人がいるって分からないんですか」

「モラトリアム期とはなんですか」

「デリカシーのない質問ですね」

「うるせぇ、バカ。てめぇのお気持ち察して質問するのがこっちの仕事じゃねぇんだよ。どっかいけ、ゴミ。二度と視界に入ってくるんじゃねぇ、死ねボケ」


 青春という言葉には春が入っているのに、いつだってイメージは夏だ。

 汗をかいている若者は絵になるのだろうか。

 それとも、夏の甲子園があるからかな。いや、春も甲子園はあるか。

 青い空に白い雲が綺麗だからかな。いや、青い空に白い雲は春でも秋でも冬でも見ることができるな。

 夏が好きなのかな。

 きっと、そうなんだろうな。

 皆の青春が、夏のような眩しさとともにありますように。

 皆の青春が、夏とは無関係に続きますように。

 皆の青春が、夏休みのような自由を抱えたものでありますように。


「青春とはなんですか」

「あなたが思う瞬間です」

「モラトリアム期とはなんですか」

「一生です」

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