第1話

ふわっと舞い込む春の風に、風にふかれて落ちてくる桜の花びら。


一枚のピンクの花びらが、私の隣を歩いている彼の頭に乗る。


彼の名前は飛酉ひとり秋星しゅうせい


銀色の少し目立つ髪色で、背は少し高め。


私の幼馴染であり、私の好きな人だ。


世の中ではイケメンと呼ばれる部類の彼の顔をじっとながめていると、彼が気づきこちらをみて不思議そうにたずねる。



「なになに? 俺の顔、なんかついてる?」



髪に乗っている一枚の桜の花びらを見つめながら、「うん、ついてるよ」と答える。



「え⁉ ちょ、どこ!」


「髪」


「髪⁉」



秋星は自分の頭をなで、桜の花びらをとってもち、見つめる。


その直後、「これ?」と優しく微笑んだ。



「そう、それ!」


「もっと早く教えてくれよなー、マジで!」


「無理」


「はあ⁉」


「さっ、入学式なんだからはやく登校しなきゃ! 急げー!」


「はっ⁉ まだ時間あるし! ごまかすんじゃねー! 待て!」



走って高校へ駆け出す私と、それを追いかけて走る秋星。


こういう距離感が、今もあとも、ずっと続いていたらどれだけ幸せなのだろう。





――――――――――





校門にたどり着いた私は、立ち止まって校舎を見上げる。



「わぁー、立派な校舎だなぁ……」



大きくて白い校舎は、中学の校舎とは違って迫力がある。


後ろから追いかけてきていた秋星もここまで来たが、肩が上下に動くくらい息切れしている。



「お前なー……手加減しろよぉ……」


「へへんっ!」



私、小学生の陸上記録会では400mリレーの選手だったし、中学生では陸上部だったから、あしのはやさ、というか運動には自信あり!


秋星はバスケ部だったから運動はいけると思うんだけどなぁ……?



「さっ、行くぞ秋星!」


「はいはい、わかりましたよー」



少し注目を集めてるなか、私たちはこの四季華しきか学園がくえんの入学式へと向かった。



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