つんつん彼女のことをデレさせたい
でずな
素直になって
「おはよう」
「ふん! おはよう」
私の彼女、
付き合う前まではよくテレてデレデレしていたはずなのに、付き合ってから急にトゲトゲし始めた。
最近同棲し始めたのもあってか、つんつん度が増した気がする。
「凜音〜。そういえばこの前見に行きたいって言ってた映画見に行かない?」
「そんなのもちろんに行くに決まってるでしょ!」
いやなんで大声?
映画を見終わった私たちは適当に喫茶店に入った。
私は映画を見たあとあまり感想を言い合うようなことはしないが、凜音が映画館を出たあとからずっとソワソワしていたのでそれを見かねてのことだ。
「それでそれで、やっぱり最後の怒涛の伏線回収は鳥肌たったな……。
「え? うぅ〜ん。ヒロインの子が可愛かったかな」
「それはどういう意味で?」
「どうって……そんな深い意味はないよ? ただ小動物みたいで可愛いなぁ〜って」
「ふふふふぅ〜ん。小動物ね」
顔をそらしてホットケーキに手を付け始めたということは、テレてるのかな?
「ま、まぁそんなこと私聞くつもりなんてなかったんだけどね!」
「聞いてきたの凜音じゃないっけ?」
「ふるふぁい! これでもくらえ」
「むっ」
凜音に無理やり口の中にホットケーキの端っこを入れられた。
やっぱりこの感じテレ確定だ。
って、全然関係ないんだけどここのホットケーキめちゃくちゃ美味しいんですけど。
喫茶店で『テレてる』『テレてない』論争を繰り広げ、その後はモールにいって軽い買い物をしたり一緒に服を見たりして家に帰ってきた。
「疲れた……。だめ。もう私もう寝る……」
「そんなのだめに決まってるでしょ! ほら、お風呂入るよ」
お風呂。
もう眠くて記憶が薄くなっていたのであまり覚えていないけど、今凜音に髪を乾かされているのを見るにどうやら一緒にお風呂に入ったらしい。
さっきまで眠かったのになんか逆に目が覚め始めてる。
「ん……」
私と凜音は同じベットの上。
凜音は私と違って寝ぼけてスマホを反対側に持っているのでもう眠そうだ。
もしやこれは、いつもつんつんしている彼女のことをデレさせるチャンスなのでは?
「凜音」
「ん〜?」
ほのかにジャンブーの甘い匂いが鼻を通り過ぎた。
「凜音ってなんでいつも私といるときつんつんしてるの?」
「そんなのなんか緊張するからに決まってるじゃん……」
「え。私といるとき緊張してたの? もう長い付き合いじゃない?」
「その、同じ家にすみ始めてから佐美のことを近く感じてドキドキしちゃうの」
ドキドキするなんて、普段の凜音の口から絶対出ない言葉だよ……。
この調子だと簡単にデレさせれそう。
「えっとじゃあ、凜音。私、凜音のこと大好きだよ」
「うん。知ってる」
あ、あれぇ〜?
私が予想していた反応と全然違うんだけど。
「大好きなんだよ?」
「だから知ってるってぇ〜。私のほうが佐美のこと大好きだよぉ〜だ」
小悪魔のような色っぽい笑顔に言葉が出なかった。
「さぁ〜みぃ〜」
「な、なに!?」
なんで急に抱きついてきた!?
「私、佐美の気遣ってくれる性格とか大好きだし、むにむにしてるほっぺたとかも大好きだし、もちもちしてる肌とかぜぇ〜んぶ大好きだからね?」
「私もぉすきぃなんだけどね……」
「え? なんて言ったの? 聞こえなかったなぁ〜」
絶対今の聞こえてたじゃん。
り、凜音ってば実は魔性の女だったんだね……。
「何も言ってないけど」
「えぇ〜うっそだぁ〜。私の耳が大好きな佐美の声を聞き間違えることなんてないはずなんだけど」
さっきから大好き大好き大好き大好き……。
な、な、な、なんでそんな言う!?
「どうしたの? なんか顔が赤い気がするんだけど」
「し、知らない!」
「えぇ〜。なんで丸まっちゃったのぉ〜」
私が凛音のことをデレさせるはずだったのに、いつの間にか私がデレさせりてた。
ん? 改めてなんでこんなことになった!?
わかんないけど、うん。もういいや。
これ以上喋ったら本当に私が堕とされそう。
「じゃあ私もう寝るから。おやすみ」
「はぁ〜い。おやすみ」
カチカチカチ……と、時計の秒針を刻む音がよく鳴り響いている。
もう数十分間経ったのだろうか。
隣から聞こえてくる寝息から、もう凜音は寝ているはず。
なんで私がこんな時間まで起きていたって?
そんなのさっき私がいいようにやられて悔しかったからその腹いせをするために決まってる。
寝ているんだから、何を言っても大丈夫だよね?
「凛音、私も大好きだよ」
「えへへ。知ってる」
って起きてたんかい!
つんつん彼女のことをデレさせたい でずな @Dezuna
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