第40話 王宮舞踏会ではハロルドを守ると約束しました

ハロルドが実は第一王子だった。


何よ! それ?・・・・全然聞いていないんだけど。


それは辺境伯のエイブさんらに若って言われていたから、王族か何かだとは思ったけれど、第一王子殿下だとは聞いていなかった。


確かに、辺境伯からは側室として王家に嫁いでいた話は知っているし、ハロルドの正体を気付いて当然だった。


でも、ハロルドも言ってくれてもいいじゃない! 全然人が集まっていない第一王子派の話もしたんだから、私は完全に他人事で言っていたから、本人としては少し怒ったんじゃないだろうか?


でも、その時にはっきりと正体を明かしてくれないと。


私はムッとしてしまった。



「キャサリン様はご存知ではなかったのですか?」

カーラは慌てたが、もう後の祭りだった。


「私はてっきりキャサリン様がご存知で、ハロルド様の横に立たれるつもりだと思っておりましたのに。キャサリン様なら、隣国の公爵令嬢ですし、ハロルド様の立場も盤石になるのではないかと思ったのですが」

「何言っているのよ。私はロンド王国の王太子に婚約破棄されて、実家からも見捨てられようとしているのよ。そんな女が殿下の婚約者になっても良いことなんてないじゃない」

私はそう言った。そうなのだ。ハロルドが少し良いと思ったのはハロルドが騎士だからだ。このベルファストの第一王子だからではない。それを知っていたら、さすがの私も私の護衛になんか頼んでいない。


「でも、キャサリン様は、隣国で王太子妃教育を今までされていたんでしょう。多少は違うと思いますが、そのまま応用できますよね」

いや、だからカーラ、私は隣国の王太子に断罪されたんだって・・・・。そんな女を婚約者にしても足手まといになるだけで、ハロルドが王位を継ぐのにはマイナスになるって。


私は言葉を変えてそう言ったのだが、カーラにはあまり響かなかったみたいだ。




王都に入ったので、馬車は辺境伯のタウンハウスに入った。


屋敷は警戒が厳重なほどだった。篝火が建てられて、いたるところに騎士がいる。下手したら合戦になるみたいな感じだった。


馬車からはハロルドが降ろしてくれようとした。


「ハロルド、あなた、この国の第一王子殿下だったの?」

私は思わず聞いていた。ハロルドは驚いた顔をしたが、


「その点については中で話そう」

私はそう誤魔化すハロルドについて、屋敷の中に入った。




「キャサリン。今まで話していなくてすまなかった」

席に着くやハロルドがいきなり謝ってきた。


「まあ、気づかなかった私も悪いけれど」

そう言われたらそう答えるしか無かった。


「俺としては王位を継ぐつもりはなかったし、それでいいかなと思っていたんだ。弟が継ぐべきだと思っていたんだ。しかし、今回のスノードニアの侵攻を防いだので、俺の株が急に上がったらしい」

「そうなんだ」

「なんかキャサリンの武功を取ったようになって申し訳ないが」

「いえ、私はお世話になったエイブさんらを助けただけだから、武功なんてどうでもいいわ」

ハロルドは謝って来たが、実際は敵の大半を倒したのは私なんだけど。でも、それは親切にしてくれた辺境伯領のみんなを助けたかっただけで、それによる報酬なんて期待していなかった。この国のことなのだからハロルドのプラスになったのならそれに越したことはない。


「弟はスノードニア王国の策略に乗って辺境伯領に援軍をわざと送らなかったんだ。それで父の激怒をかったらしい」

「第二王子殿下では心もとないと多くの貴族が考えたのです。そこで今回のスノードニアの侵攻を防がれた始祖の再来と呼ばれているハロルド様にぜひとも継いでいただきたいと私もハロルド様を推すことにしたのです。更にはハロルド様は竜を従えた聖女様とご一緒されているみたいなので」

伯爵が言うんだけど。最後に何を言ったかよく聞こえなかったんだけど。


「今回のパーテイーでなにか仕掛けてこないとも限ららないので、キャサリン様も出来たら若を助けていただけるとありがたいのですが」

辺境伯が緊張した面持ちで頼んできた。


「判りました」

私は安請け合いしてしまった。


ここまでハロルドに守ってもらってきたのだ。まあ、私は3分間だけは最強だし、ハロルドをその間だけ守るのは出来る。


乗りかかった船だ。やるしか無いだろう。


私は敵の狙いが私達だとは思ってもいなかったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る