第15話 伯爵領に向かいました
龍ちゃんが私のペットになったことについて、皆驚いていた。
「いやあ、まさか、古代竜をペットにされる方がいらっしゃるとは思ってもいませんでした」
私は恐る恐るエイブさんに、龍ちゃんをペットにすることについてお願いしてみると、笑われてしまった。
「よろしいのですか? せっかく討伐に来られたのに、私がペットにしてしまって」
私の言葉に龍ちゃんが私の胸に顔を隠して恥ずかしがっていた・・・・というか、処分されないかビクついていたのか?
「まあ、古代竜がダンジョンからいなくなったことですし、宜しいのではないですかな。報告書は適当に書いておきますよ」
エイブさんは鷹揚に許してくれたので、私はホッとした。
「しかし、古代竜も浅ましいものですな。キャサリン様に叶わないと判るとペットになるなんて」
エイブさんの嫌味な言葉に龍ちゃんはムッとしてエイブさんを睨んだが、フンっと首を振ると私の胸に顔を埋めてきた。それをなんか、ハロルドがムッとしてみているんだけど。
私達はそのまま、伯爵領に向かうことにした。
伯爵領まではここからなら直接行ったほうが早いみたいだった。
エイブさん始め5騎の騎士の方が、一緒に来てくれることになった。
残りの騎士達は国境の町に戻ってそのまま帰るそうだ。
エイブさんには遠回りになるのでは、と迷惑をかけることを躊躇したんだけど、
「なあに、若とキャサリン様をそこまでお見送りさせて頂くだけですから」
とあっさり言われてしまったので、その好意を受けることにした。
ケタリング伯爵領はそのダンジョンから2日の距離にあって途中で1泊野宿して、行くことにした。
料理は相変わらず、ハロルドがうまくて、鍋も絶品だった。
「なあに、キャサリン様。ハロルド様の鍋は王国一の絶品ですからの。負けても気にする必要は無いですぞ」
と大声で言われるんだけど、そう言われても、なんか、少しムカつくというかあれなのだ。
「まあ、あれですぞ。キャサリン様は古代竜を1発でペットにされたお方ですからの」
エイブさんは、私が落ち込んでいるのに気付いたみたいだった。
「それだけでも十二分に若の嫁には成れますて」
うーん、それはちょっと違うんじゃ無いのか。普通は公爵令嬢の私の婿にするのに男に対して、そういう言葉は使われるのだ。女が使われたら、怪物が嫁に来たと怖れられる方だろう。
私が更にムッとしていると
「爺、そもそも、キャサリン殿は私のような者が釣り合うはずもなかろう」
ハロルドが言ってくれるんだけど。
そうだ。そもそも、私とハロルドはお雇い主と雇われの関係だけなのだ。
婚姻とかありえない。それに平民の冒険者になるのは私なのだから、騎士職でお貴族様のハロルドには私の方がふさわしくないはずだ。
そういった旨言うと、
「おい、キャサリン。まだ冒険者をやるつもりかよ。出来ないのは判っただろうが」
ハロルドが言うが、
「何言っているのよ。龍ちゃんに勝ったのは私よ。十分にやっていけるでしょ」
「倒した後に気絶したやつが何言っているんだよ。これが冒険者のパーティーだったら、気絶している間に、貞操奪われているところだぞ。もっとも、遊んでいたお前ならもう関係ないかもしれないが」
「なんですって!」
私は叫ぶと思いっきりハロルドを張り倒していた。
ハロルドは鎧着たまま木に激突していた。
「若、今のは流石に若が悪いですぞ」
エイブさんが注意してくれた。
龍ちゃんも思いっきりハロルドにアカンベーをしてくれた。
「ふんっ、絶対に許さないんだから」
私はその後はムカつくハロルドではなくて、エイブさんに乗せてもらうことにした。
ハロルドは流石に悪いと思ったのか、謝りに来たが私は許さなかったのだ。
そのまま、私達一行は寂れたケタリング伯爵領に到着したのだった。
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