第2話 命がけのダイブの途中で全て思い出しました。何とか障壁展開して命だけは助かりました

今日は王宮の舞踏会。本来ならば私の隣には婚約者で王太子殿下であるエイベル様がいるはずだったのだ。


でも、何故かエイベル様はピンク頭の聖女と仲良くなって、私とはほとんど一緒に過ごしてくれなくなっていたのだ。


この公爵令嬢の私キャサリン・シェフィールドが、たかだか一男爵令嬢にコケにされたのだ。そう、このピンク頭さえいなくなれば。



私はそのムカつくピンク頭のアデラ・ヘセイ男爵令嬢を階段の上から突き落とそうとしたのだ。



「危ない!」

ピンク頭の横にいたエイベル・ロンド王太子がピンク頭を引き寄せる。


私は誰もいなくなった空間を思いっきり押して、飛び出していたのだ。


そう、王宮の大階段からジャンプしたのだ。




私の名はキャサリン・シェフィールド公爵令嬢だ。そして婚約者がピンク頭を守ったエイベル・ロンド王太子なのだ。おいおい、ピンク頭守るよりも婚約者を守れよ。と私は言いたかった。


この女たらしの王太子は聖女として出現した淫乱なピンク頭に女の魅力で迫られて陥落、嫉妬に狂った私がいろんな虐めを発動したが、腹黒ピンク頭にことごとく躱されて、悪役令嬢としての地位を獲得していたのだ。



最後の手段として大階段から突き落とそうとして、元々警戒していたというか、罠にかけようと待ち構えていた腹黒ピンク頭の予定通り、躱されて突き落とそうとした私が死のダイブをしているのが現状だった。


今まで苦労して鬼王妃のアシュリーの王妃教育に耐えてきたのに、それらの全てがこの一瞬で藻屑と化したのだ。


私の努力の全てが崩壊したのだ。


一瞬、振り返るとニヤリと笑ったピンク頭と馬鹿にしきったエイベルの顔が視界に入った。そして、その瞬間だ。今まで忘れていた大量の情報が頭の中に入り込んで来たのだ!




前世の話から、交通事故になった時、黒服の神様の話まで。


あのボケ神、私を騙して悪役令嬢に転生させやがったのだ。


それならそうと転生する前に一言、言えよ!


私もこんな時にそれを思い出してどうするんだよ。


私は今、大階段を飛んで落ちているのだ。もっと前もって判っていれば、こんな女たらしの王太子なんてさっさとこちらから婚約破棄して、もっと自由に生きられたのだ。今頃知ったってもう遅いだろう!



でも本では、ここで死ぬのだったっけ?


いやいや、確か、小説の中では、王太子が浮遊魔術を私にかけて助けてくれたのだ。


でも、その後断罪されて、国外追放されてしまったが・・・・。いや、その途中で盗賊に襲われて慰み者にされた挙げ句に娼館に売られるのだったかな。最後まで読んでいないからよく判らなかったけど。


振り返ると、王子が浮遊魔術をかけてくれようとしたのをピンク頭が止めているじゃん。



ええええ! ちょっと、待てよ。そんな、浮遊魔術掛けてくれなかったらこのまま死ぬしかないじゃん。


やばい。あのピンク頭も浮遊魔術をかけようとしなかった王太子も絶対に許さない!



いやいやいやいや、それは後だ。今はなんとしても助からねば。


こんなに高速回転でものを考えたのは生まれて初めてだった。


私はない頭を必死に巡らせた。


そういえば神様は最後に言っていた。チートスキルを私につけてくれたって。もうここはそれを出してくれるしかない。



「助けて神様」

もう、私は形振り構っていられなかった。


最後の神頼みだ。今まで神様なんて祈ったことないけど、ここで祈らないでどうする!


するとどうだろう。私の自分勝手な思いが通じたのか


ピロリロリン。


頭の中で音が鳴ってステータスが出てきたのだ。


こんな時にステータス出してどうするんだよ!私は切れまくっていた。




何々?


攻撃魔術 レベル1 こんなの使えるわけ無いだろう!


攻撃力  レベル1 レベル1なんてゴブリンレベルだろうが・・・・・

最弱魔物レベルでどうするんだ。


思考力レベル1、どういう事よ。レベル1って、私の考える力ってゴブリンと同じなわけ・・・・・


聖魔力 レベル1 意味ないでしょ。足擦りむいたのを治すくらいだ。

こんな階段から落ちたら即死だ。全く使えん!


闇魔力レベル マイナス100 マイナスに振り切れていてどう使えと言うのよ。


もう地面はそこだった。


障壁 レベル無限大。ただし3分間だけ

なんじゃ! これは さっさと出てこいよ!


「障壁」

私は大声で叫んでいた。


一瞬で目の前に障壁が展開する。


ガンッ

でも、少し遅かったみたいで、鼻の頭を思いっきり打っていた。


鼻血がブシューと出るが他はなんともない。衝撃は全て障壁が吸収してくれた。

少し遅れた鼻以外は。その鼻も鼻血が出た程度で、そんなに大きな損傷は受けていなかった。


何とか助かったのだ。


でも、障壁でショックは止められたけど、私は地面に潰されたカエルみたいな姿勢で、はいつくばっていたのだった。


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