殷仲堪11 窮余

殷仲堪いんちゅうかんの部將であった劉系りゅうけいが、以前に二千人を預かって楊佺期ようせんきの下で動いていた。しかしそんな劉系が兵を率い、殷仲堪の元に帰還。この動きを桓玄かんげんらは大いに恐れ、大慌てで殷仲堪の軍に追いすがり、尋陽じんようでようやく追いついた。こうして殷仲堪は官位をこそ失ったが、桓玄らの兵力を頼みとするようになった。


中央より睨まれている今、桓玄らにとっても殷仲堪の勢力に頼らざるを得ない状態である。桓修による離間工作が奏功し、殷仲堪と桓玄楊佺期との間には猜疑心こそ芽生えていたが、とは言え表だって敵対することもできずにいた。


こうしたあたりで、立場の逆転が起こる。殷仲堪は官位を失ったため、その立場が弱くなっている。代わって桓玄の立場が高くなった。そのため殷仲堪は楊佺期と子弟を交換、お互いにとっての人質とした上で、尋陽にて同盟を組み、桓玄を盟主として仰ぐこととした。祭壇にのぼり、お互いの血を飲み、三人ともに詔勅を退け、王恭おうきょうの無罪を訴え、劉牢之りゅうろうし司馬尚之しばしょうしらを誅殺すべく訴えることとした。


朝廷はこの動きを大いに恐れ、以下のように詔勅を降した。


「殷將軍が先ごろ拠点を失われたことは、朝野でも憂いの抱かれているところである。さすれば、ここは先ごろの諍いを互いに水に流し、いったん兵を引き、朝旨をお受け入れ願えまいか。受け入れて頂けるならば、ふさわしき官位への復帰を約束する。殷將軍がお示しになった大義はまこと朕の心を打った。いま元の官位に戻り、守るべき地をお守りになることで、武装解除の上兵を休めれば、北府西府がともに同じほうを向くことが叶おう。こう願うが故に太常の殷茂にこの詔勅を持たせた次第である」


殷仲堪らはこの詔勅を受け取り、それぞれの任地に帰還した。




仲堪將劉系先領二千人隸於佺期,輒率眾而歸。玄等大懼,狼狽追仲堪,至尋陽,及之。於是仲堪失職,倚玄為援,玄等又資仲堪之兵,雖互相疑阻,亦不得異。仲堪與佺期以子弟交質,遂于尋陽結盟,玄為盟主,臨壇歃血,並不受詔,申理王恭,求誅劉牢之、譙王尚之等。朝廷深憚之。於是詔仲堪曰:「間以將軍憑寄失所,朝野懷憂。然既往之事,宜其兩忘,用乃班師回旆,祗順朝旨,所以改授方任,蓋隨時之宜。將軍大義,誠感朕心,今還復本位,即撫所鎮,釋甲休兵,則內外寧一,故遣太常茂具宣乃懷。」仲堪等並奉詔,各旋所鎮。


(晋書84-27)




んんんんんんん? いまいち流れがわかりづらい。桓修の言葉で桓玄と楊佺期の官位が引き上げられ、逆に殷仲堪は官位を剥奪された。それを不服として殷仲堪が引き返すぞ、と言ったのは、これ桓玄と楊佺期の家族とかを皆殺しにするぞ、と脅した感じ? 詔勅を退ける、となると桓玄と楊佺期の刺史叙任もなくなるけど、そこは保持、桓修の荊州刺史赴任だけが取りやめとなった、でいいのかしら。とりあえずこの動きで桓玄にとって殷仲堪が攻め滅ぼす敵として確定した、は間違いがなさそうですが。まぁおとなしく次話を読んでから考えることにしましょう。

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