王恭6  再決起

この頃の東晋とうしん内外はお互いに疑い合い、長江ちょうこう沿いの川港も警戒が厳しくなり、まともな連絡も取り合えない状況であった。殷仲堪いんちゅうかんからの書面は庾楷ゆかいを通じて王恭おうきょうの元に届けられたのだが、傾いた絹布に内容が書かれ、それが鏑矢の中に強引に強引にねじ込まれ、更にその上に漆を塗り立てられたせいで、漆まみれとなった絹の書面はまったく解読できない。王恭は庾楷が同期決起を偽ったのではないか、と疑う。加えて王恭にとって気に掛かるのは、殷仲堪が前年に王国宝おうこくほう討伐の決起を歌いながらも結局駆けつけなかったことである。このため王恭はもはや殷仲堪は動かないものと認識し、機先を制する事のみを期し、挙兵に踏み切った。


この挙兵を、副官の劉牢之りゅうろうしが諌める。

「将軍は陛下の義理の叔父上として忠貞の節度をお示しです。また司馬道子しばどうしさまは周公旦しゅうこうたんにも比すべき尊き血筋のお方、時勢はお二方の連携をこそ望んでおります。先に王国宝と王緒おうしょの両名を処刑し、王廞おうきんに矛を収めるよう書面をお送りになったのも、司馬道子様が将軍を重んじ、尊重するゆえにございました。このところの任官は確かに時勢にあったものとは申せませぬが、これにより大きな損害も出ておりませぬ。そも庾楷の任地のうち四郡を王愉おうゆに分け与えたからと、将軍にはなんの損もござりませぬ! 趙鞅ちょうおう荀氏じゅんし范氏はんしを攻め滅ぼしたが如き振る舞いをなすにしても、それは今ではございますまい!」


王恭はその諫言を聞き入れず、上表し王愉および司馬尚之しばしょうし兄弟に封爵、任官を辞退するよう迫った。辞退するよう迫った。朝廷は司馬元顯しばげんけん王珣おうしゅん謝琰しゃえんらに王恭の軍を防がせようとした。




時內外疑阻,津邏嚴急,仲堪之信因庾楷達之,以斜絹為書,內箭稈中,合鏑漆之,楷送於恭。恭發書,絹文角戾,不復可識,謂楷為詐。又料仲堪去年已不赴盟,今無動理,乃先期舉兵。司馬劉牢之諫曰:「將軍今動以伯舅之重,執忠貞之節,相王以姬旦之尊,時望所系,昔年已戮寶、緒,送王廞書,是深伏將軍也。頃所授用,雖非皆允,未為大失。割庾楷四郡以配王愉,于將軍何損!晉陽之師,其可再乎!」恭不從,乃上表以封王愉、司馬尚之兄弟為辭。朝廷使元顯及王珣、謝琰等距之。


(晋書84-6)





統制を取るだけの権威のグズグズさ、以上に言えることがなさそうなのが、こう。劉牢之さんも、こういうの見てるとマジとばっちりですよね。

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