郗恢3  暗殺

郗恢ちかいずい郡を守っていた夏侯宗之かこうそうし河南かなん太守とし、洛陽らくようを守らせた。姚萇ようちょうはその子の姚略ようりゃく湖城こじょう上洛じょうらくを攻撃させ、さらに楊佛嵩ようふつすうを派遣し洛陽を包囲させた。

郗恢は辛恭靖しんきょうせいに洛陽の救援に出向かせ、梁州りょうしゅう刺史の王正胤おうせいいん子午谷しごこくから関中に出させ、後背から姚略を脅かす動きをとらせた。姚略は怖じ気づき、撤退した。郗恢は洛陽防衛の功績から征虜將軍となり、秦州しんしゅう刺史、督隴上ろうじょう軍が加えられた。


この頃拓跋が強盛となりつつあり、山陵さんりょうにその勢力を迫らせていた。郗恢は江夏こうか相の鄧啟方ていけいほうら一万人の軍で迎撃に出、拓跋珪たくばつけい滎陽けいようで戦うも、大敗。撤退した。


王恭おうきょう王國寶おうこくほうの殺害を目論むと、桓玄かんげん殷仲堪いんちゅうかんもまた挙兵し王恭に呼応した。郗恢や朝廷は桓玄らに立ち向かう形となった。夏侯宗之や副官の郭毗かくひらはみな桓玄らにつくべきだと申し出たが、郗恢は彼らを殺した。


桓玄らがいちど尋陽じんように下がったところで郗恢は尚書とされた。郗恢が自宅に帰還せんと楊口ようこうに出たところで、殷仲堪が放った暗殺者に殺害された。また諸蛮のもとに預けていた四子も殺された。その遺骸は建康けんこうに運ばれた。鎮軍將軍が追贈された。子の郗循ちじゅんが継いだ。




恢以隨郡太守夏侯宗之為河南太守,戍洛陽。姚萇遣其子略攻湖城及上洛,又使其將楊佛嵩圍洛陽。恢遣建武將軍辛恭靖救洛陽,梁州刺史王正胤率眾出子午穀,以為聲援。略懼而退。恢以功進征虜將軍,又領秦州刺史,加督隴上軍。

時魏氏強盛,山陵危逼,恢遣江夏相鄧啟方等以萬人距之,與魏主拓跋珪戰于滎陽,大敗而還。

及王恭計王國寶,桓玄、殷仲堪皆舉兵應恭,恢與朝廷掎角玄等。襄陽太守夏侯宗之、府司馬郭毗並以為不可,恢皆殺之。既而玄等退守尋陽。以恢為尚書,將家還都,至楊口,仲堪陰使人於道殺之,及其四子,托以群蠻所殺。喪還京師,贈鎮軍將軍。子循嗣。


(晋書67-4)




■斠注


太平廣記たいへいこうき』の引く『幽冥錄ゆうめいろく』に載る話です。

安帝の治世のはじめころ、郗恢の家の中にトカゲっぽい何かが出現。毎度数匹が現れては照明の中に飛び込んで消失します。郗恢の娘たちは大小となくこの怪奇現象に怯え、郗恢にそのことを話すも、郗恢は信じません。そうこうしているうちに、トカゲのような者はまた姿を現します。

そして隆安二年、郗恢は殷仲堪らと政治方針を違え、建康に逃れようとしたところを庶子もろとも殺されました。

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