94 サンドワームの洞窟へ♪

 直ぐに出発したいので急いで準備をしてもらう。宮殿前に馬車を用意してくれてそれで出発との事だ。

 パトラ女王が今宵は歓迎会パーティーを開きますのに。残念です。と泣きだすけど、遅れれば遅れるほど先行した冒険者の命が減っていく。


 僕としてはそんな状況でパーティーを開かれても楽しめない。と伝えた所パトラ女王もわかってくれた。

 直ぐにアルトさんに命令して今にいたる。

 

 その馬車前には、不機嫌そうなアルトさんが立っている。



「遅い!」

「ごめん!」



 僕としては早くついたけど遅かったのなら僕の責任だ。



「ラック様、アルト様はラック様に文句を言いただけなのですよ♪ パトラ様がラック様にむチューなので」

「そうなの!?」

「だれがお前みたいなチンチクリンにパトラ様がチューチューなんてあってたまるか! さっさといくぞ!」



 アルトさんは御者台に乗り込んだ。

 場所さえ教えてくれれば僕は勝手に行くのでその事を伝えてみる。



「ばかか! 冒険者が勝手に動くな。特にお前にいたっては最悪の最低だ。以前この国で指名手配されているのを覚えてないのか!」

「あったっけ……? ああ、あったかも」

「あったかもだと? パトラ女王が必死にお前の無実を証明してだな……くそが、そういう話は今はいい。さっさといくぞ!」



 怒られた僕は馬車に乗り込む。

 次にリバーとザックさんが馬車に乗りこんだ。

 ミリアさんとナイは馬車に乗り込まない。

 

 馬車の外で気をつけて行けよ。とミリアさんが声をかけてくれる。



「え? あれ……一緒に行かない!?」

「馬車が小さいしな。私は一番弱いし、いても足手まといだろう」

「………………ん。戦い嫌い……」

「それにナイを一人で置いていくわけにはいかない」



 ナイは規格外で正直一緒にいて欲しいけど、本人が戦いが嫌いなら仕方がない。

 そういわれると確かにナイが自ら戦っている所は見た事ない。



「じゃなくて。ミリアさんは強いですけど……」

「いつまでも一緒じゃなくても大丈夫だろう、私はラックのママではないしな、こちらで副隊長としての仕事をしておくよ」



 僕としてはクアッツル同様にたまにママと呼びたいきもするけど。確かにナイを一人で置いていく事も出来ない。



「わかりました……では行ってきます!」



 僕が言葉をしめると馬車が動き出す。なんだかんだいって、アルトさんは気配りが上手う、今だって僕の挨拶が終わるまで待っていてくれたのだ。


 馬車が街の中心を通り砂漠のほうへ進んでいく。日が暮れてくると星空が綺麗だ。そこから更に二日ほど進んでやっと遺跡の前までついた。

 僕はアルトさんの顔を見て聞くことにする。



「あの遠くないですか……」

「………………どこの世界に魔物が出る遺跡の横に街を作るんだ? あ?」



 アルトさんに切れられた。

 何もキレなくても……いいだろうに。



「ではラック様。文句ばっかりのアルト様は置いておいて行きましょう。この階段から地下に進むんですよね?」

「…………そうだ。食料は置いておく、俺は一度もどり後でお前らの死体を回収するから回収しやすい所で死んでおけ!」



 アルトさんが散々文句をいうと本当に馬車に乗って帰っていった。残されたのは僕達3人と1匹、地下に続く階段があり底がみえない。



「さてラック進むぞ」

「あっはい!」



 僕は地形を確認しながら進む。壁の素材に、壁に刻まれた印がないかなどだ。前衛はザックさんに任せて、リバーはその中心で前後に気をつける。僕は最後尾で逃げ道の確保に専念する。


 それを見たザックさんが僕を見ては感心した声をだしてくる。



「中々だな、さすがはA級と言った所か」

「それなんですけど、僕はA級冒険者ほど実力もないですよ……」

「では俺はその実力の無い男に負けたのか?」



 う。ザックさんの声が不機嫌になる。

 そういう事を言っているんじゃなくて……ええっと。



「冗談だ。実力ではないなら運であろう。しかしだ! 運も実力のうちだ、それに俺はお前が出した一撃は今でもかわせる自信はない。胸を張ってくれ」

「そうですよ! 張るのはテントだけにしましょう。ラック様のテントは4日に1回ぐらいですし」



 よくわからなく、わかりたくない冗談をいうリバー。

 ザックさんが僕とリバーを交互に見る。



「俺としては、俺の所にいた元メイドがお前と一緒にダンジョンに潜っているほうが理解できない」



 良かった。

 ザックさんはやっぱりだ。



「リバーはラック様のメイドですので当たり前です♪ ラック様のいる所にリバーあり。早く結婚してラック様の子供の飼育をしたい所です♪」



 飼育って犬猫じゃないんだし。

 でも、こう一緒にいてくれるだけで心が落ち着く。

 パーティーから追放されて辺境に来るまで1人で本当に寂しかったのを思い出す。



「所で……サンドワームを退治するのはわかったのですが、なんでこんな場所にいるサンドワームが旅人や使者を襲うんでしょうか?」

「…………聞いてなかったのか? サンドワームはどこにでも出て街道だろうが家の中だろうが関係ない。この場所に巣があるのだろう。と事だ。もっというと、サーキュアーの騎士団が動かないのは自国にはあまり被害がないからな、元々亜人は強い者が正義だ仲間にしろ魔物にしろ、王国の弱い人間が食われた所で……」



 なるほど。

 でもそれで王国に反逆の恐れありって報告されて困っている。

 パトラ女王にはお世話になっているし助けてあげたい。



「っと……ラック。先をみろ壁が崩れている」



 ザックさんが教えてくれると確かに壁が崩れている。その手前には大きな穴が開いており、何かの戦いの後があったのがわかる。

 冒険者の装備や、何かの羽。血痕に折れた剣や携帯食料などが散らばっていた。



「戦いの後……ですよね」

「だろうな。先に進もうにも壁が落ちているし、この下かロープを垂らせばいけそうだな……メイド、先に帰れここからは男の仕事だ」

「わかりました! とでもリバーが言うと」

「ラック。このメイドを帰らせろ」



 ザックさんが僕にリバーを帰らせろ。というけど……正直僕より強いよね?



「リバーはラック様より弱いですよ?」

「まだ何も言っていないよ」

「これは失礼しました。言ってそうでしたので」

「ザックさん。リバーは連れていくよ、その回復アイテムも持ってもらっているし、外で一人のほうが危ないと思うし」

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