061 ラック君の下半身は元気いっぱいです
全身が痛くて目が覚めた。
薄暗い……? いや白いのが二つみえた。
え。これって目!?
「んんんんんん!!!!」
目の前に顔があって僕は思わず声が出た。
暗い影で見えなかった顔が離れるとナイなのがわかる。
暗かったのはナイの髪が壁になっていたから、今は明るくなって日中なのか確認できた。
「んん!? ん、んん!!?」
「パパ、口の包帯を取ります」
口の周りが軽くなる。
包帯があったのね……でも、やっと喋れる。
「ここは?」
「宿です」
「いや、うん……宿なんだろうけど、他の皆は?」
「席を外しています」
うん。会話が終わった。
ナイはじーっと僕の顔をみている、ちょっと怖いし、微妙に会話が通じてないようなきもする。
「えっと試合は……?」
「パパが負けました」
「だよね? 最後にスタン第二王子が飛んで来たように見えたけど……あと、ゾルドンさんとジャックさんは?」
ナイはしりません。と言ってから首を振る。
部屋の扉があけられると、三つ編みの女性が入って来た。
確か。
「第七部隊副隊長のユーリーはいるよ。………………思ったよりも元気そうで。すけこましくん気分はどうかな?」
「え。はい、生きています。じゃなくて、え? すけ……?」
「死なれたら困るし、すけこましの事は遠い地方で伝わる勇敢な戦士って意味だから気にしないで」
そ、そうなのかな?
思いっきり悪口に聞こえた様なきがしたけど、ナイもユーリーさんもそれ以上言わないし、後でミリアさんに聞いてみるかな。
「ええと試合と……スタン第二王子は……」
「スタン第二王子とゾルドン第二部隊は先に帰還。ジャック第六部隊は別任務、私達第七部隊はラック君を護衛しつつ王都に目指すって所かな」
「はぁ……ありがとうございます」
ユーリーさんは僕の手を突然に触ってくる。温かい感触が伝わるし、綺麗な女性に突然触ってもらって少しだけドキっとする。
顔が近く、ほんのりと良い匂いがした。
「痛みは?」
「少し痛いですけど別に……補助魔法を使いすぎるといつもこうなんです」
「おかしいわね……ミリアの時は違うのかな? まぁいいわ、出発はラック君の回復が終わり次第って所です、少し元気がなくなったのかな?」
ユーリーさんは僕の足元を見ると突然変な事をいいだす。
意味が解らない。
「すぐに治します!」
僕が宣言するとユーリーさんは左右を見回す、誰かを探しているような。
「よし、誰もいないわね頼むからゆっくり治して、じゃなくても休暇も潰れるしミリアと再会を喜ぶ時間も少ないし……第七部隊は失敗ばっかりだし、報告書はスタン第二王子は要らないっていうけど出さないわけにはいかないし……ああ。もう休暇が欲しい」
「わ、わかりました。ゆ、ゆっくりと治します」
「セシリアならともかく、私が不真面目だと示しつかないからね。じゃっそういう事でお大事に、あんまり体に負担かけないようにね」
ユーリーさんが部屋から出ていく。
負担かけないようだなんて優しい……代わりにミリアさんが入って来た、背中には子供が張り付いてい要る。
「意識がもどったようだな…………その凄い元気そうだな」
「ようなのだ。ぐいんぐいん」
何だろう、さっきから僕を見ては変な事を言ってくるような?
全身包帯だらけで布団に入ってるだけだ、ベッドの横ではナイが座ってるだけで何も変わった所はない。
ぐいんぐいん?
それよりも。
「ええっと…………ミリアさんの子供ですか?」
ユーリーさんの子供かと思ったけど、ミリアさんにくっついてるからそう見えてしまった。
「そんな年齢に見えるか?」
「はい」
………………。
なんだろう、押し黙ってしまった。
だってミリアさんは30才として、背中に乗ってる子供は12才ぐらいにみえる。差し引くと18才で産んだ事になるし、全部合うじゃないか。
「にひひ。せっちゃん、ミリアの子供ー♪」
「セシリア……降りなさい。命令」
「せっちゃん、隊長だからミリアの命令なんて……」
ミリアさんがセシリア? に振り向くとセシリアの言葉が止まった、そのままするすると背中から降りていく。
やっぱり小さい子供にみえる。
「ええっと? セシリアちゃん?」
「じこ紹介したんだけどなー……第七ぶたいのたいちょーのセシリア。特別にせっちゃんって呼んでいいよ。でもせっちゃんはミリア隊長の部下だから恋人にはならないよ?」
「そういう、ままごとですか?」
僕はミリアさんに尋ねると、せっちゃんがベッドを揺らす。
「うああ! おちる。落ちるから!」
「遊びじゃなくて本当だ。力だけならゾルドンにも負けないだろうな」
「すごいね……せっちゃん」
「せっちゃんは凄いのだ」
「で……何の用で」
怪我人の僕に出来る事なんてあまりない。
あっそうか……。
「ミリアさんへの魔法ですよね。いたたた、足出してくれれば、か、かけます」
「かけなくていい。たっく……見舞い。私だって見舞いぐらいくるし、足は無理をしなければ痛みはほぼないまで完治した。ラックのおかげだよ。元気がありあまるのもいいが、体を治したほうが良い」
「なるほど。ありがとうございます、そういえばリバーは?」
先ほどから姿が見えない。
あれほど騒いでいたんだ、今いないのはちょっと変なきもする。
「私達は知らない。ナイと一緒に看病を……」
「ラック様…………呼びました?」
「うわああっ!」
布団の中からリバーの手と顔が出て来た。
突然すぎて腰が下がる。
「なんだ……リバー
「やっほー!」
「やっほー♪」
ミリアさんがため息をつくと、せっちゃんとリバーは謎の挨拶をかわしだす。
「ミリアさん知っていたのなら教えてくれれば……」
「いや……その、先ほどからラックの股間部分が凄い動いていて、元気そうだな。と、まさかリバーとは」
「え?」
僕はリバーと視線をあわす。
え?
「あの、リバー……?」
「はい♪」
「そのさっきまでしていた事をもう一度いいかな?」
「では!」
リバーの顔が布団にかくれる。
僕の股間がある場所が大きなテントをはってグイングインと上下左右に動く。
会話を思い出す。
全員が全員元気そうだ。と。
「なんでええ! え。リバー!?」
「はい♪」
リバーが顔をだすと、その距離が近い。
近すぎて僕の言いたい事が引っ込んでしまう。
「えっと……なんで? そんなイタズラを」
「え。ラック様が元気になった証拠を皆様にお伝えしようかと♪ ラック様ハーレム計画ですよ」
「リバー……私はその中にいれるなよ」
「せっちゃんもパスー!」
告白してないのにいきなり二人に振られた。
いや、別にいいんだけど……。
ミリアさんはママタイプだし、せっちゃんは子供過ぎる。
「残念、じゃぁリバーとナイだけでも頑張ります」
「パパ。よろしくお願いします」
「しなくていいから…………それに、誰ともするつもりは無いよ」
「ラック様の迷惑に……リバー死んでお詫びします。しょぼーん」
いやいやいや。
落ち込んだリバーが小瓶を取り出して口に含もうとする。
「まったまった!」
小瓶を掴むとその液体がベッドや床にこぼれると、音を立てて腐っていく。
…………全員が全員押し黙る。
「リバーこの液体は?」
「毒です」
「だろうね……リバー絶対にこういう事をしたらだめ」
「え。でもリバー、ラック様のご迷惑に……」
うん。確かに迷惑と言えば迷惑なんだけど。
僕の事を思ってくれてるわけだし。
「ほどほどなら……まぁ」
「リバーがんばります!♪」
助けを求めてミリアさんをみると、視線をはずされた。
悲しい……。
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