第45話【ラファエル視点】捨てられてしまった

 デインゲルの無能な王は、私にとってむしろ好都合な制裁を加えてきた。

 リリアのことを信仰する無能な人間を全員、デインゲル王国へ移民させたのだ。

 確かに残った人間は、貴族を中心にごく僅かだが皆私に注目してくれている。

 私への支持率百パーセントというのが王としての夢だった。


 カイエン王や宰相、大臣たちまでもが私への制裁だとか言っていた。

 制裁だと思っているのはアイツらだけ。


 さぁて、それでは新エウレス皇国を築き上げていこうか。

 マーヤと、私への忠誠を誓っている者達と共に。


「なんだって!? もう魔法は使えないだと!?」

「そ。だって、囚われた理由は本当なんだもの」


 マーヤが澄ました表情をしている。

 私に対し今までの態度がまるで違う。


「まさか、いつか使えるようになると言っていたではないか!」

「そうでも言わないと皇王と結ばれるなんて無理でしょ。でももうアンタみたいな尻軽男に用はないわよ!」

「な……なんだと!? 本気か!」

「えぇ。そもそも、豪遊したかったから結婚までしたってのに、むしろ大変な目にあってばっかり……。しかも、カサラスから貰った財宝まで全部持っていかれたっていうし。役立たずのゴミ男とは二度と関わらない。私はデインゲルへ向かうから」


 今まで見たこともない冷徹な眼差しを見て、私の背筋は凍りついた。

 愛するマーヤのために必死だったと言うのにこのザマだ。

 監獄に入れたまま飢え死にさせてしまえば良かったと後悔している。


「おのれ……、マーヤだけは私を裏切らぬと思っていたのに。貴様、ロクな死に方せんぞ!」

「せいぜい砂漠化しそうな腐った国で足掻くがいいわ。私は頭が良いから、ちょっとだけペコペコ頭を下げておけばデインゲルで住めるのよ。そこで金持ち探して再婚するわ。じゃあねー!」


 まるで、かつてリリアを見送る際にマーヤが暴言を吐いていたようなことを今度は私に対して言うとは……。


 だが、まぁ良い。

 今のエウレス皇国ならば私の天下だ。

 まずは当面の水を確保し、民衆どもに作物の生産をやらせればなんとかなるだろう。


 ところで、魔導士ってまだ残っていたっけ……。

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