第22話 モンスターと戦闘

 辺境地ビレーヌは、エウレス皇国とデインゲル王国の国境に近い位置らしい。

 主にデインゲル王国へ大量仕入れに向かうときの中間地点として利用している村だそうだ。

 間も無く到着するあたりで、異様な光景を目の当たりにしてしまった。


「あれは!? 炎!?」


 辺境地ビレーヌの村が見えたあたりで、いくつもの炎が燃え上がっている。

 そしてその上空には、ギャーギャー騒ぎながら一体の赤い鳥が暴れているようだ。


「モンスターだな。炎を操る鳥、大型種族のファイヤーバードか……。火災は間違いなくあいつの仕業だろう。まさか辺境地でこのような者が暴れているとは……」


 生存者の救出や火災の消火も大事だが、まずは現況を断たねばならないだろう。

 こちらは二人とルビーしかいないし、カルム様を危険な目に合わすわけにはいかない。


「カルム様は一旦降りて避難してください」

「リリア、まさか戦うつもりか!?」

「ルビーが一緒だから大丈夫です」


 すぐにカルム様を下ろすためにルビーは下降しようとしたのだが、それよりも早くカルム様が口を開いた。


「いや、ならば私も一緒に残ろう」

「え!?」

「ルビーがいれば安全なのだろう? それにリリアたちの活躍をこの目でしかと見届けたい」


 あまり考えている時間もないので、ここはひとまず頷き、このままファイヤーバードの元へ向かう。


 しかし、すぐにこちらに気がつき炎を吐いてきた。

『水よ来たれ!』

 すぐに水を具現化する魔法で対抗する。


 向かってきた炎を全て掻き消し、さらに残った水もファイヤーバードの本体に直撃した。


「ゴギャァァァ!!」


 かなり苦しんでいるようだ。

 ファイヤーバードなだけに水に弱いのかもしれない。


「ぎゅーーーーー!!」

『水よ来たれ!!』


 ルビーが口から吐き出した猛烈な勢いの水圧に加え、私の魔力で具現化した水も合わせて放った。


「ゴギャアアアア……!!」


 水圧の力でファイヤーバードは吹っ飛び、そのまま岩山へ激突した。

 岩山に穴が開き打ち付けられたので、おそらく倒せただろう。


「リリアにルビーよ。もはや私はなんと言って良いのやらわからぬが、ともかく凄かった」

「まさかモンスターと戦うことになるとは思いませんでしたけどね……」


 モンスターの生存確認よりも先に、村の消火を優先することにした。


「ぎゅーーーーー!!」


 ルビーの力で空を曇らせ、村に雨を降らせた。


 しかし、炎を消火するにはもっと激しい雨が必要になってしまう。


『水よ来たれ』

『水よ来たれ』

『水よ来たれ』


 何回魔法を唱えたかはわからないが、火が上がっている建物や森に向かって何度も水魔法を発動させた。

 もちろん、人が流されないように加減しながら。


『水よ来たれ』

『水よ来たれ』

『水よ来たれ』


 合計で少なくとも五十回以上は連続詠唱しただろうか。

 少々疲れてしまったが、無事に森を含めて村中全ての火を消化することができた。


 消火した場所からは住民は出てこなかったので、おそらく村の人たちはどこかへ避難したと祈りたい。

 流石に、既に焼死してしまったとは考えたくなかったのだ。


「リリアよ……そんなに威力の高い魔法を連発して大丈夫なのか!? カサラス王国の一流魔道士でもここまで力を使えるものはいないのだぞ……」

「大丈夫のようです。ご心配おかけしました」

「なんという魔力だ……まさかこれほどまでとは……」


 カルム様は驚きながらも感心してくれているようだが、今はそれどころではない。


「消火活動は終わったので、一旦移動してもよろしいでしょうか?」

「どこへいくのだ?」

「ファイヤーバードでしたっけ? しっかりと倒せているか確認する必要があるでしょう。カルム様はその間に村の生存者の確認をしてくださると助かるのですが」

「うむ、もしも重傷者がいたとすれば救出する必要もあるからな。二手に分かれるとしよう。だが、無理はするでないぞ」


 あれ以来身動きをしていないので、おそらく退治はできたのだろう。

 だが、念のためにしっかりと息の根を絶やしたかだけは確認しておきたかったのだ。

 それに、私の体調が急に悪化してきた。

 おそらく魔力の使い過ぎが原因なのだろう。

 急いだほうがよさそうだ。


「では行ってまいります」


 カルム様だけ地面に降りてもらい、すぐにファイヤーバードが吹っ飛んだ岩山へ飛んでいった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る