第19話 ケタ違い

『水よ来たれ!』


 イデアの手のひらから、水が物凄い勢いでザバザバと吹き出した。

 辺り一体にバケツでは数え切れないほどの量を放出したのだ。

 これには私も驚き、イデアもぽかんとした表情をしていた。


「……やはり、泉で水を飲むか水浴びをしたから力が増大した可能性大」

「ルビーも力が増している気がしていたし、これで納得ね」


 試しに私も水魔法を放ってみることにした。


『水よ……来たれ』

 どうせ試し撃ちに過ぎないので、弱々しく発言してみたのだが……。


 ──バシャーーーーー!!


 イデアの具現化した水量の二倍、いや三倍の量が一気に放出された。

 洪水となって山の下降へ向かって水が勢いよく流れていく。


 この辺りには動物も人もいないから幸いしたが、やらかしてしまった感がある。


「……とんでもない威力……」

「えぇ、自分でも驚いているわよ……」


 二人で呆然としながら流れていく水を見ていた。


「……リリアの魔法は、魔力に加えて聖なる力が混じっている気がする。威力が桁違いなのはそのせいもありそう」

「今まで魔法なんて発動できなかったから怖いんだけど」


 例えばの話だが、私が睡眠中にユメをみている最中、寝言で魔法を詠唱してしまえば王宮が大惨事になってしまいそうだ。

 魔法のコントロールも出来ないしどうしたら良いものか悩んでしまう。


「……魔力は力加減なら練習すれば操れる。リリアは絶対に訓練した方がいい! 誤って発動したら王都が滅ぶ可能性有り」

「怖いこと言わないでね」


 私が思っていたことをそのまま言ってくれてありがとう。

 大変かもしれないが、これは早急に手を打つ必要があるだろう。


「……魔法は声量や発言の仕方で威力は変わらない。魔力を感じ取ってコントロールする。こうやって、『水よ来たれ!!』」

 イデアは大声で怒鳴りながら魔法を発動したが、具現化してくる水の量はわずかで、コップ一杯にも満たない量だった。


「すごい! 加減ができるのね!」

「……まずは身体に流れる魔力を感じること。魔法を発動できる者ならきっと出来るはず。後は筋力のように調整すれば良い」


 そう言われてみると、身体の中に流れている何かの力を感じた。

 聖なる力は常に感じられていたが、魔力はまた別の感覚だな。


「こんな感じかな。『水よ来たれ』」


 本当はイデアと同じ量を意識したが、バケツ一杯程度の水が手から放水された。


「……一瞬で理解するなんて……。さすがリリア」

「イデアの説明が分かりやすかったのよ」


 私の力は、魔力と聖なる力がどうしても混じってしまうようだ。

 別々になるようにコントロールしてみたが難しい。

 というよりも、多分無理だと思った。


 身体に取り込んだ空気を吐き出す際に、二酸化炭素だけ吐き出して酸素は残しておくようにと言っているような感じである。



 ともかく、これで大惨事は防げるだろう。

 変なユメをみてしまい、寝言で魔法を発動しないように心がける必要はありそうだ。


 目的は達成できたので、ルビーの背に乗り王宮へと戻っていった。

 もしかしたら水魔法以外も使えるのではないかと、ルビーの背に乗りながらふと考えていた。

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