第89話 引き寄せ方2

 水音に耳を澄ますようなしぐさを彼女に窘められ、特に動きをみせていない空いた手を彼女の左手に重ねた。

 その手を……短く切り揃えられた爪のアーチを、彼女は指の腹でひとつひとつ確認している。

 相反するような反応を右と左で表現する彼女。私の肩を掴む右手は少女が親に縋るようなちからが込められ、左手は私の行為を認めるようなを感じてしまう。

 彼女に操られるように……下着の中で、私の指先が彼女のリズムを真似る。

 彼女はその反応でも、ちぐはぐの表現を続けている。

 今度は、右手の真似をと考えたら彼女に柔らかな否定をされた。

「愉しみ過ぎ?」

 指をとめて彼女に尋ねる。

「本当に恥ずかしいし、嬉しいの」

 私の耳に近づけて唇を動かしたから、彼女の表情はわからないが見られたくない恥ずかしさと視てもいたい喜びの顔はその言葉に充分、溶け込んでいる。

 雰囲気がとても私好みで、小さな笑い声を出してしまった。

「あし、閉じようかな」

 その言葉は迷いで感情が繋がってないと思うのだが、瞬時に反応してしまう。

「後で、私のしたことをせめないでね」

 彼女は私から恥部を抽出するのに躊躇いがないし、この言葉に意味は持たせられないのだろうが脚を挿し入れ、物理的に閉じられないようにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る