第81話 猫目線(21)

 黒猫のじたばたは、しばらく続く。見ようによっては、可愛らしさとかを感じさせる動きになっていたりするが、黒猫は苦悩しているのだ。

 黒猫にクロニックな星の光となっている白猫は、雲に隠れる時はあれど風に流されてしまえば煌々と輝く存在であり続けているから。

 今、自覚という白猫の爪が黒猫の胸中に深く突き立てられてゆく。

 時間の経過で、心で傷つくなら深く重くなる前に逃げられたら───。

 黒猫が臆病に向き合っていたなら、突然の別れであってもここまで気持ちを持っていかれることもなかっただろう。白猫はマボロシを与えるような絶妙の距離にいつも意図せず現れたから、黒猫には実態を感じないあかりだった。

 でも、胸に感じる痛みは現実ほんものなのだ。

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