第76話 一緒に
「手は変わらないからね」
意識せず言葉にしたが、彼女の心を掴んだようで濡れている手を私の袖の中へ入れてきた。
「んっ、変わらずにあったかい。ふふっ」
私のぬくもりを奪っていく冷たい手、振りほどきはしないが困ってはいるその姿を彼女が優しく笑う。
「変わらずに、好きだよ」
「私もよ」
「おかえししなきゃね」
「ふふっ、求めてないわ」
彼女にそう言われてしまうと、行動には移せずじれったくではあるが私も笑った。
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