第51話 猫目線(6)

「にゃー」(予定とかは、なかった?)

「ニャー」(ん? 心配してくれてるの?)

「にゃー」(どこかに行く途中なら、あんまり引き止めるのも……)

「ニャーー」(逆なの、帰る場所が無くなったっぽいんだよね)


 白猫の予想外の返事に、黒猫はびっくりして起き上がった。


 どういうことにゃ?


 身体の反応のように、心は反応しなくて状況の把握をするためと間違ってしまわないようにするため、簡単に白猫へ伝えるアクションを起こせない。


「ニャー」(関係ないことよ)

「に、にゃー!」(すみかがなくなったなんて大変なことだよ!)


 雨風凌げて、外敵に見つかりにくい場所。そんな場所をまた探すのは大変なことであるし、今まで住んでいた所を追われた理由というのも黒猫は本当に気になっているようだ。


「ニャ」(もう、気にしないで)


 白猫は短く鳴くとベンチから離れ、振り向いてついてこないでという目を黒猫に向けてから富士山の隙間へ走り、もう一度その目をしてくぐっていった。

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