私になれない貴方になれる私
信広
第1話 明日も?
壁に金塊、カコカコ。
沿わすように積み重ね、並べてゆく。
この遊びの面白いところは、言葉では表現できない。
こんな単純作業なのに彼女は、どうしてそんな表情で続ける事ができるのだろうか?
自分のものだから?
その見た目?
その重さ?
金塊は彼女だけのものではないが、彼女のものと言える。
この部屋にはキューブ型のガラスを通して外の光りが入ってくる。晴れた夏の午前に浴びられる太陽の明かりは、彼女の白い肌には敵だか、金塊を金塊足らしめている……まあ、魅力的な見た目と言える。
彼女が片手で持ち続けるにはやっかいな重さなのだけれど、金塊にとっての重さとなるとやっかいではなくなるみたいだ。
「夢みたい」
あまり言葉を知らないのかな? と思わないでもらいたい。彼女はよく本を読んでいたし、会話をする相手は大抵、退屈することはない。
「ふふっ、3列目」
カコカコと重ね始めた時と同じ表情で、ミステリアスにキュートで……不美人である。
造形だけで言えば美しい顔立ちなのだが、今の表情は不美人と表現するのが正しいと思う。
これを遊びと彼女が思っているのかは不明だが、目的なく理由のない行為ならば遊びだと私は思う。
「ここにあるのを全部、そうしてみるの?」
別に答えを期待していない私の問いかけは、声色にも溶け込んでいて彼女は私を見ることもない。
私は今日が毎日続くことが頭に浮かんだ瞬間、椅子から立ち上がった。
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