🔫

1

 ホテルをでて道を渡り海岸にでる。


 ユリちゃんは、真っ暗な海岸にポツン、と座っていた。


 耳にあてたスマートフォンから灯りが漏れて、かろうじてそこにユリちゃんのいることがわかる。


 息をつめる。


 「みう? うん、夜にごめん」


 ユリちゃんは電話とじぶんの気持ちに夢中だ。オレに気づいてないのを確認し、


 防砂柵からとびだし思いきり脚をふる。


 「がっ、は!」


 手応え…脚応えがあって、砂浜に、ひょろりと長い影がふっとぶ。


 「きゃっ!」

 ユリちゃんが驚いてとびのく。


 「いてぇぇぇぇえっ」

 そのままもうひとつ、背後の丸っこい影を掴んでひねり上げる。


 「く、くじらさん? くじらさんですか? え? なにこれ、なんですかこれ!」

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