第二部第十一章 人と恩恵の神教会
89 アイテムボックス
目立ちたくないので街の外で馬車から降ろしてもらった。適当にお菓子を買ったりして時間をつぶしてからメイの家に帰る。尾行はいないよね多分。まあいまさらだけど。
メイの家に着いてもまだやることがいっぱいある。まずはボスのアイテムをあかりに鑑定してもらわないと。
まず盾のように見える亀の甲羅のような物体。おそらくボスのドロップ品。
鑑定によると水系魔法の効能があるとのこと。でも、
『水出ろ』
と念じてみても何も起きない。川とか行ったときに何か試してみることにした。
なお表側はつるっとしていてカメというよりすっぽんな感じ。そして裏側には持ち手があるのでやっぱり盾のようだ。持ってみると意外と軽い。そういえば水に浮いてたしな。
盾として構えて振り回してみる。軽いから取り回しもよく、大き目の盾だから防御効果も高そう。これは僕が使うことになった。僕のスコップ!は引退かな。それはそれとして、せっかくの恩恵だし一つはスコップを持っておきたいところだけど。
そして、小島で見つけた例の宝箱。
長辺が30cmぐらいで見た目はゲームに出てくる宝箱みたいだ。角を金具で補強した木箱だ。持ってみると思ったより軽い。
最初は空なのかと思ったが、開けると金貨が入っている。ひっくり返すと、どう見ても箱のサイズより多い金貨やら銀貨やらが流れ出てくる。
そして最後に本が一冊ゴロンと出てきた。大き目の本でメイがこの間読んだ式神の本によく似ている。この箱のどこに入ってたんだこれ。箱より大きいのでは。
あかりが出てきた本を開かないように注意しながら、うーんとか言いつついろんな角度から眺めている。鑑定をしているのだろう。
「何の本?」
「タイトルが書いてないのよ」
「鑑定で何系とか判るんじゃないの?」
「それが判らないのよ。でも強い魔法の本みたい」
「じゃあ、あかりが使えばいいんじゃない?」
みんな賛成した。最近のあかりは活躍の割に取り分がなかったしね。といっても使い方が分からないみたいだけど。
まあそれはともかく、問題はこの箱そのものだ。
「ところで、この箱って妙にいっぱい入ってなかった?」
「変ですね。何か入れてみましょうか」
メイが自分のバックパックからいろんな物を取り出して箱に入れてみている。どう見てもバックパックより小さいのに、なぜかいくらでも入る。
メイが部屋の物を箱に詰め込み始めた。枕や布団も入る。入れるものがなくなり、部屋の外から様々な雑貨を持って来る。ホウキやらモップやら明らかに箱のサイズより長いものも入るんだけど。見ていて気味が悪い。
「っていうか、入れたはいいけど出せるの?」
「手を入れると出せるものが頭に浮かぶんです」
よく手を入れる勇気あったな。
「どうみてもアイテムボックスだけど、実在したんだな」
なろう三大チートと呼ばれるアイテムボックス。あと二つは鑑定となんだったか思い出せないけど、しかしラノベでおなじみのアイテムボックスが本当に箱の形をしているとね。
この箱ににいろいろ突っ込んで検証してみた。まず入れられるもののサイズだけど、入り口から入る大きさの物だけだった。液体もそのまま入れられるが、出すときもそのまま。ひっくり返すとジャバジャバ出てくる感じだ。生き物を入れてみたところ、箱の見た目のまましか入らなかった。アイテムボックスとして扱われるのは無生物を入れた時のみらしい。
なおこのアイテムボックスだけど、試した結果容量はかなり大きいようだ。水を流し込んでみた感じだと10立方メートルぐらい入るんじゃないかな。ざっくりと小型トラックの荷台ぐらいの大きさだ。入口のサイズに制限があるものの夢が膨らむところ。
早速、みんなでアイテムボックスに入れるもののリストを作ることになった。
僕は予備の武器を提案した。僕用には投擲用の鉄球のほかに投げ槍を10本ほど入れといてもらおう。もちろんスコップも。それからメイのダーツも大量にあったほうがいいよね。シャリは保存食と言っている。
「私はとりあえず長さ5mぐらいの丸太を10本ぐらいかな」
あかりによると丸太は万能らしい。
「それじゃ残りの容積で水を5トンぐらい入れときますね」
そう言いながらメイがリストに書き込む。この二人はざっくりしてるな。自分のせせこましさがちょっと恥ずかしくなってきたんだけど。
ところでこれがアイテムボックスなのはいいんだけど、問題はこの箱が微妙にかさばるところなんだよね。袋ならよかったんだけどしょうがない。
結局、箱のままアイテム化できるのでとりあえずはメイに持ってもらうことになった。このアイテムボックスそのものには時間停止機能はないけど、メイがアイテム化すれば丸ごと時間停止するので食料も詰め込むことができる。冒険に行くなら便利だ。
「どうも入れたものは小さくなるとかじゃなくて別の空間に繋がってるみたい」
鑑定しながら出し入れの実験をしていたあかりがぶつぶつ言っている。
「やっぱり空間魔法は実在したんだわ」
――
近況ノートにあかりちゃん研究中の挿絵を置きました
https://kakuyomu.jp/users/yamamoriyamori/news/16817330652205138930
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます