87 亀竜(リワインド)
「おにいちゃん」
シャリが僕にしがみつく。どうする。
「みんな、ゆっくり下がるんだ」
巨大カメを刺激しないようにそーっと。意外とおとなしいのかもしれないし。
え、あれ?
猛烈な
僕いま何かしてなかった?予知能力の恩恵は持っていないけど、これからまずいことが起こりそう。そして、なにか心に引っかかっている。
なにか重要なことを見落としている。さっきなにか違和感を感じたはず。それだけは覚えている。なんだ。
妹たちを見回す。あかりとメイがじりじりと遠ざかろうとしているところ。シャリは僕の脇を離れない。
巨大カメは僕らの方を向いたまま。長い首が左右にふらふらと揺れている様子は獲物を探すかのよう。そしてあかりの方にゆっくりと首を伸ばしている。
池のそばにはさっき倒したリザードマンの死体が打ち上げられている。そして水に濡れたマント。
違和感がぶり返した。リザードマンの死体。マント。
『そうだ。マントだ!さっきあれを調べようと思ってたんだ』
リザードマンの死体に近寄る。やっぱりあかりの魔法を食らったのにマントは無傷だ。これは普通の布ではない。恐らくは魔法の品。引っぺがして羽織る。
『飛べ!』
マントが翻り、僕は空中に浮かんだ。巨大カメの首はあかりのほうを向いたまま。
『覚醒!』
まずはステータスを上昇させ、カメに向かって叫ぶ。
「こっちだー!」
槍を最長に伸ばして構え、空から思いっきり突撃。巨大な目が睨んできた。長い首が回り、大きな口がこちらを向く。いきなり急降下し、水面ぎりぎりでロールしながら反転。口の下、喉に向かって槍を構えて。
『縮地!』
喉に槍を思いっきり突き刺した。入れ違いに僕の上を蒸気のブレスが通り抜けていく。
陸地のほうをちらっとみる。みんな無事みたい。首長カメの長い首に捕捉されないように軌道を小刻みに変えながら、すれ違いざまに槍で攻撃を続ける。
突然、空から大きな姿が現れた。鳥だ。ドラゴンほどではないが大きな赤い鳥。新しい敵?
大きな鳥は急降下してカメの頭を爪とくちばしで引き裂いた。巨大な首長カメは噛みつこうと首を伸ばすがさっと躱している。そうか。あの鳥は、メイの式神だ。
首長カメが巨鳥に向かって首を伸ばしたところに、稲妻のような白い閃光が走る。あかりの
『やったか?』
槍を構えて慎重に空中を近づいてみるが動かない。念のためにとどめを刺すために頭に近づく。
首がいきなり跳ねあがった。大きな頭が僕に迫る。
『やっぱフラグじゃん!』
その時、上空から舞い降りた巨鳥の爪がカメの頭をかすめた。長い首が僕から巨鳥の方に向き直り口を開く。そして轟音とともに水蒸気のブレスが発射された。
巨鳥は水蒸気の雲に捕らえられると姿を消した。紙だから水に弱いのかも。
ブレスを吐き終わった巨大カメが余韻の様にその動きを止めた瞬間、開いた口に白い光が発生した。光の塊は大きく膨れ上がって巨大なカメの頭から首を飲み込む。衝撃波が水面を走る。そして爆風。大きな波が立つ。あかりのマジックボムだ!
薄れていく魔法の光の中から巨大首長カメの姿が現れた。まだ生きてる。しかしその首は弱々しく水面に落ちてもがいている。
僕はその正面に向かい、顔を上から睨みつけた。
「勝負だ!」
僕が叫ぶと、それは緩慢な動きで巨大な鎌首を持ち上げる。
巨大な首長カメの喉が膨らむのを見つつ槍を構える。そいつはゆっくりと口を大きく開く。回り込むような緩やかな降下から一気に急降下。位置エネルギーをスピードに変換して水面ギリギリを飛ぶ。
最長にした槍をランスのように構え、突撃!
僕の槍が巨大カメの長い首を貫通した。蒸気が漏れ出る。そのまま槍を力任せにぐりぐりと回すと首が半分ちぎれる。
巨大な頭部がぶらんとぶら下がり、遅れて首の全体が水面に落ちる。
大きな水しぶき。
僕の体の奥からこみ上げる力。これはレベルアップだ。しかも大きい!
――
フィン:レベル5(2 up)(人間:転生者)
・恩恵:レベル判定、レベル移譲、気配察知、槍使い、投擲、格闘、縮地、精神耐性、スタミナ向上、ロケート、手斧使い、スコップ、庇う、耐久力向上、罠スキル、炎、クリーン、テイム(妖精)、言語理解、耐熱、隠ぺい、盾術、力持ち、覚醒、突撃(new)、予知(new)
シャリ:レベル4(down)(人間)
・恩恵:癒し(フィンに効果2倍)、プロテクション(フィンに効果時間2倍)、攻撃力付与、メイス使い、リワインド、状態異常耐性、催眠術
あかり:レベル5(エルフ:転生者)
・恩恵:鑑定、初級攻撃魔法、中級攻撃魔法、隠密、耐寒、マッピング、詠唱破棄
メイ:レベル6(人間:転生者)
・恩恵:衣装製作、アイテム化、投げナイフ/ダーツ使い、エンチャント、形状加工、紙の神
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