第二部第七章 王都

70 婚約者:(人物紹介付き)

ここから後半なので人物紹介

――

フィン:主人公で転生者

 日本の18歳の知識を持つ14歳。前世の記憶はない。レベル譲渡トランスファー。レベル上がったり下がったり繰り返し今はレベル2。恩恵は今のところ20個


シャリ:妹。実際は従兄弟の子

 おにいちゃん依存症。メイスで殴るヒーラー。催眠術も使える。レベル5


あかり:日本での妹を名乗る転生者

 年上のエルフだが見た目は16歳。お兄ちゃん大好きだがショタコンの拗らせ系オタク。またの名をカトリーヌ。斥候系攻撃魔法使い。レベル6


メイ:年下で巨乳の転生者

 フィンにレベリングされて助けられた元中華系コスプレ好き女子大生だが13歳。生産系だがダーツ投げる。レベル5

――



 王都への旅はさらに一週間続いたが、僕らは隊商と一緒に馬車に乗っていたこともあり大きな問題はなく到着した。王都近くは田舎に比べると治安はいいんだろう。馬車でお尻は痛くなったけど。シャリが毎日ヒールしてくれた。


 王都に入るが、メイが市民なので僕らも問題なく入域。メイの家に急ぐ。


「ただいま!」

「メイちゃん!」

お店の人のびっくりした声。「旦那さまーメイちゃんがー」という呼び声も聞こえる。


「メイ!」

「お父さん!」

おじさんが出てきてメイが抱き着く。

「痛い。痛い。メイ、お前力が強くなったな」

そこに女の人も出てきた。黒髪だ。

「メイ!」

「お母さん!」

いやー、感動の対面だね。


「メイちゃんよかったねー」

「ちょっと泣いちゃうわね」

僕らきょうだいが話をしているところにメイが両親を連れてきた。


「お父さん、お母さん、こちらはお世話になったシャリさんとあかりちゃんです」

「シャリです」

「あかりです」

そしてメイは僕の目を見てちょっと微笑む。


「そして、お父さん、お母さん。こちらはこの二人の兄で、私の婚約者になったフィンです」


『え?』

メイの顔を見る。パチパチとウィンクしている。

「あ、はい。メイさんと婚約しましたフィンです。よろしくお願いします」

メイがよく出来ましたという顔で僕を見ている。そしてシャリとあかりがぽかんとしている。

『この後どうなるの?』



「どういうことかな、姉さん」

「だからその呼び方はちょっと」

ちょっと場を外させてもらってメイの部屋に四人で入り、僕が説明を求めたところ。


「親の説得に協力してほしいって言ったら、”僕にできることなら何でもする”って言ったじゃないですか」

「普通もうちょっと事前に説明とかない?」

「まあいいじゃないですか」

メイが僕に抱きついてきた。大きな胸をすりすりされる。

「これで私たち婚約者ですよ」


「ちょっと待ったー」

「どうしたの?妹たち」

「私たち承認してないわよ」

「婚約するのに妹の承認はいらないでしょう」

「おにいちゃんはシャリのだから」

「お兄ちゃん思いの妹ね。お姉ちゃんうれしいわ」

メイがシャリの頭を撫でる。


「で、どういうことよ」

あかりはわりと平静。

「だから、冒険に出れるように両親を説得してほしいんですよ」

「なんで婚約なのよ」

「結婚するとなればもう両親の承認必要ないでしょ」


 えーっと、メイはいま13歳だよね。

「来年まで待てば大人になるからそれまで待てば?」

「それまで待っててくれるんですか?」

「えっ?」

うーん。それもそう。ダンジョンとか行くよね。


「だから、みんなで話を合わせてください!私たちきょうだいなんだから」



「メイから話は聞いたんだが」

メイの父の前。

『どんな話を聞いたんだろう……』

「婚約の話はさておき、まずはメイを助けてくれてありがとう。礼を言うよ」

「困ったときは助け合いですから」


 今はメイの父親と二人で話をしている。一応「お前に娘はやらん」みたいな展開も予想していたんだけど意外とまともだった。大人だな。


「ダストンといい、君といい、メイは人に恵まれているんだろうな」

メイを連れて行ったダストンさんが死んだことは聞いたようだ。


「あの子が妖精の子だったのは知ってるのだろう?」

「はい。僕の妹のシャリもそうでしたから」

「なるほど。だから君が助けることができたのか」

メイの父は何かうなずいている。


「やはり、ダンジョンか?」

「そうですね」

なんかわからないけどそう言っておく。

「なるほど。教会の言ってる事は正しかったのか」

またうなずいているメイの父。というかみんなもうちょっと事前情報くれないかな。


「ならば教会のほうにも礼はしておかないといかんな」

教会ってあれだよね。メイがレベル5だってバレると話がややこしくなりそうだな。


「メイさんは修行が大変だったのでしばらく教会は行きたくないと言ってました」

「そうか。あいつにはいろいろ無理させたからな」

お、なんかいい展開。


「それでは失礼します」

「そうだ、フィン君」

「はい、なんでしょう」

「まだ結婚していいとは言ってないからな」

ですよね普通。



「お父さんなんて言ってました?」みんなのところに戻るとメイが聞いてくる。

「教会に行くとか言ってたからメイは行きたくないと言っといたので話合わせて」

「はい!わかりました」

やっぱり鑑定から隠ぺいする系の恩恵を取るべきなのか。でもそんなもののために一個潰すのもったいない気も。ていうかそんな都合のいい恩恵あるのかな?


 そうだ、恩恵といえば。


「本当に大司教は恩恵20個持ってるのかな」

「そう言われてますね」

メイが答える。


「それだけじゃなくて教会の司教様はみんな8個とか10個とかの恩恵を持っているって話を聞いたことあります」

「恩恵の神の恩恵かな?」

「そんな都合のいい神様いないでしょ。なんか仕掛けがあるんじゃない?」

あかりが口をはさんできた。

「ていうか、お兄ちゃんは恩恵いまいくつある?」

「えっと、僕も20個」



 メイに連れられて四人で外出。王都をあちこち歩く。

「ここが中央市場です」

大きな建物の外には生鮮食料品のテントがいっぱい。建物の中は貴金属や武器のお店があるらしい。


「ここは王宮」

ヨーロッパなお城だ。槍にプレートメイルの衛兵が立っている。甲冑ではなくてチェーンメイルのあちこちが板金で補強されたような鎧。ちなみに衛兵はレベル3だった。


「ここは教会」

例の”人と恩恵の神”の教会か。そびえるようなゴシック様式。でも意外と小さいな。

「ここが教会の本部?」

「ここは礼拝堂で総本山は近くの山の上にあるんですよ」

なるほど。


 王都というだけあってそれなりには広いが、日本の町の感覚でいうと地方都市ほどもない。全人口で300万人の国だもんね。とはいえ今までの町の中では一番大きい。町というより街だ。串にさして焼かれた肉を市場で買い食いしながら、街行く人のレベルを計測する。


『0、1、0、1、1、2、0、1、3、1、0、1、0、0、2、1…………』


 やっぱりレベル4以上は滅多にいないな。


 夕食にはグリフォン肉を提供した。旅行中も細かく食べていたけど量が多かったのでようやく使い切ったよ。僕らは多少飽きてるんだけど、珍しいものなのでメイの両親には喜んでもらえたみたい。「フィン君はなかなか見どころあるな」とか言われて妹たちからジト目で見られたんだけど僕のせいじゃないよね。


・・


 夕食後、メイに話があると言われた。

「どうしたの?」

「家まで来ればもっと思い出すと思ったんだけど」

「なに、記憶がないとか?」

「知識としての記憶はあるのよ。だけど……」

メイは続ける。

「両親に会っても親だという感じがしないのよ。前世の方がリアルなの」

「僕と逆?」

転生者のアイデンティティってどうなんだろう。


――

こちら、メイと街歩きの挿絵です

https://kakuyomu.jp/users/yamamoriyamori/news/16817330652642567367

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