ひなたぼっこ

 秋晴れの午後。先日休日出勤をした代休で平日休み。最近の仕事の忙しさに疲れていたので、どこへも出かけず、家にいることにした。

 窓からは秋の日差しが差し込み、とても気持ちが良い。窓際に椅子を持って行き、背中を窓に向けひなたぼっこをする。背中がぽかぽかする。スマホで動画を見たり、ゲームをやってた。

 その時、視界で何かが動いたような気がした。窓を背にしているため、部屋の中に自分の影が映っている。そうか、鳥でも通り過ぎてその影が見えたのか。特に気にせず引き続きスマホを見ていた。そして、また視界に入った。目線をまた部屋の中に映すと、自分以外の影が何か映っている。

 何の影だろう?自分の影よりは薄い感じがする。よく見ると何となく人の形をしている。振り返って窓の外を見るも、何もない。外の風景が広がっている。しかもここは16階。外に人が立てる場所はない。もう一度部屋の中の影を見るもさっき見えていた影は無かった。スマホ見てた残像でもあったかな。まあ、いいや。

 そう思った瞬間、また影が現れた。間違えなく人の形だ。自分の影の隣にいる。もう一度外を見る。影はない。部屋の影を見ると、自分の隣に人の影があり、手を振っているように見えた。うぁ!っと声を上げて、椅子から転げ落ちてしまった。ソレと同時に、影も下に落ちていくように消えていった。今のは一体なんだ?窓を開けみた。すると、下の方が何か騒がしい。何かあったのか?

 家を出てエレベーターで下に行って見ると、パトカーや救急車が来ていた。何か事件でもあったのか?管理人も警官と何か話をしていた。どうやら飛び降り自殺があったらしい。嫌だなぁ。そう思いながら部屋に戻っていった。

 少し時間が経ってから、インターホンが鳴った。モニターで確認すると警官が二人のぞき込んでいた。「恐れ入ります。○○署の者ですが、少しお話し良いでしょうか」と声をかけてきた。断る理由はない、ドアを開けて話をすることにした。


 「お休みのところ申し訳ないです。実は先程飛び降り自殺がこのマンションでありまして。その事でお伺いしたことがありまして…」


 飛び降りたのは、上階の住人とのこと。もしかすると、最初見た影は飛び降りた時のものだったのか…。でももう一回見た影は何だったのだろうか…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る