第5話 殺戮
洞窟に放り込まれてから体感で数日が経過した夜、村の方から何かが激しく燃える音と人々の悲鳴が聞こえてきた。
これは何かがあったに違いない、どうせ死ぬならば最後にそれを見てやると思った俺は、自分でも信じられないほどの力を発揮して洞窟の出口へ続く坂道を全身でよじ登った。
両手両足を縛られたまま、毛虫のように身体を動かして坂道を登る。
途中で何度も洞窟の底へと転がり落ちつつ、俺は全力で坂道を登った。
ここで使った体力で死んでしまうかも知れないと思いつつ出口まで登りきった俺は、人生で最も残酷な光景を目にした。
孫娘を連れ去ったならず者たちと同じ人種らしい何十人もの集団が島へと上陸し、火炎放射器で村を焼いている。
逃げ惑う島民はライフルで撃ち殺し、命乞いをする島民にはそのまま火炎放射器を向ける。
目の前で行われている殺戮に、俺は布で口を塞がれたまま嘔吐した。
これは現実なのか。餓死しかけている意識が見せた幻覚ではないのか。
そう思いつつ、俺は洞窟の出口で意識を失った。
「何だこいつは? もしかすると、飛行機事故で失踪したっていう本社のスタッフか?」
「どうもそうらしいな。あーあ、目の焦点が合ってねえよ。流石に連れて帰るとするか」
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