第4話 真相
村長の孫娘から言われた通り、その次のお祈りの儀式で俺はこっそりとその場を抜け出した。
あらかじめ儀式の設営に参加し、トイレに行くふりをして広場から走り出た俺は、村長の孫娘に指定された海岸へと向かった。
その日の儀式ではなぜか村長は席を外しており、俺はこっそり抜ける際に呼び止められずに済んでいた。
海岸に近づくにつれて沖合からはボートのエンジン音が聴こえてきて、俺の心にまさかという思いが走った。
海岸を見渡せる高台に身を潜め、俺はエンジン音がする方に目を凝らした。
「これが今回の
「ありがとうございます。また来月もよろしくお願い致します」
「おじいさま、私……」
「言うでない。村の娘をこれまで何人もくじ引きで生贄に捧げてきた。わしが孫娘をかばい立てしたとあっては幹部たちが承知せん」
視界の先では、村長が孫娘をボートから降りてきたならず者に引き渡していた。
英語を話すならず者は孫娘をじろじろと見ながらゲーム機とバッテリー、そしてラ・プラスの中古ソフトを砂浜に放り投げ、村長はそれを革の袋に詰めている。
これが、「ラ・プラスの島」の真相だったのだ。
「村長、先ほどの光景はどういうことですか!」
「神の使い……いや、客人。見てしまわれたのですな」
ならず者が孫娘をボートに乗せて沖合へと去り、悲しみにくれた表情で砂浜を歩いていた村長を、俺は目の前に立ちふさがって怒鳴りつけた。
「この島は若い女性を英語圏の外国人に売り渡し、その対価としてゲームやバッテリーを得ていたのでしょう。これは奴隷貿易ではないですか!」
「ああ、客人の言う通りだ。この事実は島の指導者層と、くじ引きで選ばれた若い娘本人にしか知らされない。連れ去られた娘たちは、島では神隠しに遭ったことになっている。だから……」
老人がそこまで言うと、取引を見張っていたらしい村の幹部の男性たちが四方から俺に襲いかかった。
「ぐうっ!!」
「申し訳ないが、もうあなたを生かしておくことはできない。今の島の状況は悲惨だが、島民がよりどころを失くせばもっと悲惨な状況に戻るだけだ。一度でもこの島を愛してくれたあなたを処刑することはできないから、洞窟の中に閉じ込める。本当に申し訳ない……」
老人は涙目になりながらそう言うと幹部たちに気絶した俺を島の洞窟へと運ぶよう命令し、俺は両手両足を縛られ、口を布で塞がれて洞窟に放り込まれた。
深い洞窟で両手両足を縛られては脱出など到底不可能であり、俺は餓死する瞬間まで洞窟でじっと転がっているしかなかった。
外国へと連行されたあの孫娘はどんな苦難に遭うだろうと心を痛めつつ、俺はこの狂った島で朽ち果てるのだろうと思った。
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