第85話 楓のてへぺろ☆
僕は今、僕の家に居る。
いつもと違うことと言えば僕の彼女である、楓がいると言うところである。
そして、僕らは僕の部屋へとやってきていた。
「どうぞ」
そう言うと、
「ありがと!」
元気にそう言い、部屋に入る。そして、荷物を置き、二人とも腰を下ろす。
横ではなく、真っ正面である。
「………」
「………」
(いや、気まずい!)お互いが黙り込んでしまい、とても気まずい空気が流れていた。
いつもならリビングでテレビを使ってゲームをしているのだが、僕の少しいちゃつきたいと言う裏面の欲望により、この部屋に来ている。
そして、
「「あの!」」
お互いの声がハモる。楓も楓でこの空気をなんとかしてくれようとしていたようだった。
「あ、ごめん! 悠君どうぞ!」
楓が僕が何を言うのかを聞きたいのか、そう言う。
「いやいや! 楓の方どうぞ!」
僕も楓が何を言うのかを聞きたいので、そう言う。
と、なると…? 二人の意思は同じのようで、
「じゃんけんで!」
楓が半端に区切ってそう言う。僕も全く同じことを考えていたので、即座に
「きめよう!」
僕が言う。楓も乗ってくれたので微笑んでいた。
「「最初はグー! じゃんけん! ほい!」」
勢い良くじゃんけんをした結果…、僕の勝利だった。
「うぅ、負けたぁ…。ん、じゃあ、悠君どうぞ!」
楓は残念そうに頭を落としてそう言った。
「うん、わかった! 楓、僕と…」
この時、僕はとあることに気付く。
「楓! おい! しれっと丸投げしてきたけど、これって勝った方が譲って、負けた方が言うんじゃなかったのか!?」
「………てへぺろ☆」
と、まあ、可愛く誤魔化してきたのであった。あまりにも可愛くて、僕の目は釘付けになってしまっていた。
その時脳では、(楓が彼女になってから、こんな1面とか、ぼくの知らない楓がたくさん見れてとても嬉しい)と、楓が彼女になって2日目の僕が思っていた。
「ふふっ、どうだった?」
楓が悪戯な笑顔を浮かべ、僕に聞いてくる。
(恥ずかしいけど、素直に言った方がきっと楓も喜ぶだろうし、彼女にできるだけ嘘をつきたくない)と、言う思いから
「……とても可愛かった! 良ければまた…やってほしい」
そう言うと、楓はそう答えられるのは予想外だったのか、
「ちょっと、そう正直に照れるじゃん……」
素直にそう言い、楓は下を向く。耳まで赤くなっているので、言葉通り照れているのだろう。
僕は楓を照れさせるために、僕が恥ずかしいと思ったことでもこれからも続けて正直に言おうと心に誓うのであった。
「ご飯できたわよ!」
結局こんなことをしているだけで相当時間が経ち、ご飯ができたようで下の階から母さんの呼ぶ声が聞こえた。
「じゃあ行こっか」
僕が母さんの声に反応した楓に手を差し出す。
「うん!」
母さんの声で照れが吹っ飛んだのか、いつもの調子で返事をし、僕の手を握った。よく見ると、少しまだ赤みが残っていたので、完全には取れていないようだった。
そうして、僕たちは仲良く下の階に降りていくのであった。
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