第7話 3人のディスカッション 1
ボールベアリングの開発を、エルメアーナの工房で行う事が決まると、ジューネスティーンは、学校が終わった後、毎日、エルメアーナの店を訪れる事になった。
エルメアーナが、ベアリングを作るとなったが、ジューネスティーンも協力してとなっている。
それは、世の中に無い物を開発する事になるので、発案者であるジューネスティーンが、一緒にいる事で問題についても解決の糸口が見つけやすくなるはずである。
そのジューネスティーンの行動によって、シュレイノリアが一緒に行動する事になり、それに伴ってアンジュリーンとアリアリーシャも一緒に店に行く事になった。
ただ、アンジュリーンとアリアリーシャは、ジューネスティーンとエルメアーナの話について行く事ができないので、エルメアーナの店の店番と生産管理やら資材調達までを行っているアイカユラと、蚊帳の外に居てジューネスティーン達のミーティングが終わるまで、3人で他愛もない会話を小声でおこなっていた。
ベアリングの製作について、エルメアーナは、具体的な開発の方法についてミーティングを行う前に、自分のアイデアを出せるようにと検討していたのだが、エルメアーナは最初から躓いていた。
まず、どうやって球体を作るから、頭を悩ませて、どうやって精度が出るように綺麗な球体にするのかアイデアが出ずにいたのだ。
エルメアーナは、自信の無い表情をしていた。
「なあ、ジュネス。 ある程度同じ大きさのボールを作るにはどうしたらいい。 剣なら、何度も叩いて伸ばすが、ボールは、叩いても形になんてならないぞ。 しかも、全て一緒の大きさなんだぞ」
エルメアーナは、仕事を引き受けたのは良かったのだが、鍛治技術を極めたエルメアーナにとって、同じものを大量生産するという事については、全くと言っていい程アイデアが浮かばなかったのだ。
どんなにエルメアーナの鍛治技術が優れていたとしても、寸分違わずにボールを作ることは不可能に近い。
剣を作るにしても、一振、一振には、微妙な違いが出てしまう。
似てはいるが、全て違う物なのだ。
それが、今回は全く同じに作る必要があるので、それを、どうやって作れば良いのかとエルメアーナは考えていたのだ。
そして、ジューネスティーン自身も、ベアリングについて、思った精度で作れるなら摩擦を抑えることが可能だと分かってはいるが、実際にどうやって作ろうかとなって微妙な表情を浮かべていた。
だが、エルメアーナの工房には、人が金槌を叩くのではなく、プレス機を使って金槌が剣を鍛えている。
その技術を利用することで、ベアリングの加工も可能になるのではないか。
たまたま、ジュエルイアンが、エルメアーナの店を開店させる時に購入した機械なのだが、それがジューネスティーンの日本刀の時の頃から、シュレイノリアの目に止まり、ジューネスティーンとエルメアーナを組ませることで製造可能だろうと考えていたのだ。
それが、今までエルメアーナが、日本刀の生産に興味を示して他の事に目をむけなかったのだが、ジュエルイアンからの指示でエルメアーナが手を引いたことで、ベアリングの開発の目処が出たのだ。
そして、エルメアーナもジュエルイアンから間接的にベアリングについて面倒を見るようにと指示を受けていた。
ジュエルイアンには、入学前にジューネスティーンがベアリングについて説明していた事もあり、多くの部分でジュエルイアンが、お膳立てをしてくれていた。
その事もあり、シュレイノリアはジューネスティーンのパワードスーツの完成が早くなると考えているのだ。
シュレイノリアは思わぬ幸運に喜んでいたのだが、性格的に周りが理解できるような表情は出さないので、シュレイノリアの表情は周囲には理解できなかったようだ。
シュレイノリアは、2人が組んだらベアリングも確実に作れるようになるだろうと考えていたのだ。
「お前達2人が、悩んでしまってどうする」
そんな2人にシュレイノリアが声を掛けた。
「シュレ、そうは言うけど、実際に作るとなると、かなり辛いぞ」
アイデアが浮かばないジューネスティーンは、シュレイノリアの話に反論した。
「ジュネス! お前が、あの試作品を作った時の事を、まず、話せ! それよりも良い方法を、それに量産可能な方法を導き出せばいいだけだ。 まずは、サンプルを作った時の状況を、エルメアーナに話すんだ」
シュレイノリアに言われて、ジューネスティーンは、その時の状況を話だした。
最初は、立方体を作ってから、角を叩いて整形していったが、上手く丸められなかったから、熱してから叩くようにしたら、多少は、楽に丸められるようになった。
叩いて丸めたボールは、平面の板と板に挟んで、円を描くように回して丸めたというものだった。
試作品を作るために試行錯誤した結果を、ジューネスティーンは説明をした。
1人の考えることは、閃くという部分については、大いに有効ではあるが、その先の製品化という部分においては、様々な意見を他者から聞いた方が早くなる。
最初のスタートは、1人のアイデアであっても、1人だけでその製品を作るには様々な問題に突き当たる。
問題解決に向かうなら、1人で立ち向かうより、複数で立ち向かった方が遥かに効率が良い。
それをシュレイノリアが上手く立ち回って、ジューネスティーンとエルメアーナの頭脳を繋ぎ合わせようとしているのだ。
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