第2話 魔王軍のお姫様
「・・・ぎゃぁ・・・おぎゃぁ・・・」
誰か・・・泣いてる?
「・・・様!おーよしよし!大丈夫ですからね~!ゆ~らゆ~ら!」
「バカ!そんなに揺らすな!落ちたらどうするんだ!」
誰・・・?
「これだから脳筋は・・・。貸しなさい。私が子守唄でも歌ってあげる。」
「お前たちは揃って阿呆か?この匂い・・・オムツを変えろ。」
・・・・・・オムツ?
その瞬間、下半身が急にすーすーした。
・・・と、同時に私開眼。そして生誕。
「おぎゃあああああああああああああ!!!???」
―これが私の二度目に与えられた人生の幕開けだった。
―3年後—
「キャ――――――――――!!」
「お待ちくださいアリーゼ様!廊下を走るとあぶな・・・うわあああ!!」
「何やってんのシラフ。そこなんにもないんだけど。」
「僕はシルフです!しかもそれ名前じゃないですから!!」
「それより二人ともアリーゼ様を止めてよぉ~!」
走るってたっっっっのしい!!!
前世では一回も走ったことなかったからこんなに楽しいものだと思わなかった!
「キャ―――――――!!!」
―私はこの世界では“アリーゼ”という名前らしい。
生まれた時から超ド健康で五体満足パワフルガール!
しかも髪は真っ赤な赤毛!
くりくりの瞳は綺麗な銀色をしていて、鏡に映すときらっと反射する!
神様ありがとう!!なんて素晴らしい世界!!
「だっ!!!」
急に目の前に壁が現れて後ろに転がった。
いったー・・・ってこの足はまさか・・・。
おそるおそる見上げると、そこにはつやつやの綺麗な紫色の長い髪を高いところで一つに縛り、私と同じ白銀の鋭い眼光の超絶美男子・・・もとい、
「ぱぱ!!」
「魔王様!アリーゼ様!大丈夫ですか!!」
「アリーゼ・・・。」
ドスのきいた声で私の名前を呼ぶと、パパはすっと私えを持ち上げてじっと眺めてきた。
・・・くる。
「アリーゼ~!!大丈夫だったか~!?廊下を走るときはちゃんと前を見て走らないとダメだぞ♡」
「やあああああああああ!!」
ぱぱ!!チューは!!チューはやめて!!こっちは精神年齢あなたと同じくらいだから!!!
そう。私の転生ライフ唯一の気がかりは、私の父親がこの世界を瞬く間に支配してしまった最強の魔王だってこと―。
魔王の娘って!!しかもすごい溺愛されとる!!!
神様、私そこまでは別に望んじゃいなかったよ・・・。
「魔王様、そんなにデレデレしてると配下の者になめられますよ。」
この、さっきシラフって呼ばれてた人はぱぱの側近の四天王の一人。
シルフっていう風の精霊使いなんだって。
名前は確か―。
「シラフ!!」
「お嬢様・・・、僕はシルフであってしかも名前はジルなんですけど・・・。」
そう!ジルだ!
なんでもジルは酒に酔うと性格が変わるらしくて、それで普段はシラフってからかわれてるみたい。
私は酔っぱらったジルはまだ見たことないけど。
「アリーゼさまぁ~待ってくださ・・・はっ!魔王様!!」
この褐色ボインなお姉さんはノームっていう地の精霊使い。名前はノノタ。
ノノタはぱぱを見るや否やザッとひざまずいた。
後から来たシュガーとアマネもそれぞれ水の精霊ウンディーネの使い手と、火の精霊サラマンダーの使い手だ。
「面を上げよ。」
「はっ」
ぱぱは私を抱っこしたまま4人の配下に顔を上げるよう言った。
こういうところを見ると、この人本当に偉い人なんだなぁと思う。
普段はあの溺愛っぷりだから想像つかなかったけど・・・。
これからなんか難しい話でも始まるのかなぁなんて思っていると、ぱぱは「それで、アリーゼの最近の様子はどうだ。」と話を切り出した。
・・・私の話かい!!
「アリーゼ様はとても頭のいい子ですよぉ~。言葉もどんどん話せるようになってますぅ~。」
・・・そりゃあ本当は30だからね。
「運動神経も素晴らしく、風魔法に頼らないと捕まえられないほどです。」
ジルは結構運動音痴だもんね!
「食欲も旺盛で、中型の魔物の一匹程度ならぺろりです。」
ごめんね!?シュガー!私前世では食事とかできなかったもので!!
「・・・それでアマネ。魔力の方はどうだ。」
ぱぱは最後にサラマンダーの使い手の美形お兄さんアマネの方を見て言った。
「・・・はっ。魔力量は毎日決まった時間に測定しております。アリーゼ様の魔力量は・・・規格外、と言っていいでしょう。3歳児でこの魔力量はありえません。」
え・・・。
そうなの・・・!?
もしかして私って天才なんじゃ・・・。
「まぁ、私の愛娘だ。それくらい当然だろう。」
ぱぱ様!!!!!
・・・まぁ健康的に五体満足で生まれただけで私は満足だもんね!
この世界では絶対青春と恋愛を謳歌してやる!!
「おー!!」
「ど、どうしたアリーゼ!?」
「な、なんでもない!!」
健康だと身体って意外と簡単に動くんだなぁ・・・。
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