ヒロインの魅力とはどこから来るのだろうか

清水文彩

第1話 ヒロインの性格類型より大切なことがある

 オタク業界では、ヒロインの性格がある程度類型化されています。

 ツンデレ、クーデレ、ヤンデレ、などなど……。いわゆる『〜デレ』の性格類型がまさにそれです。

 僕はクーデレヒロインを愛してますので、クーデレを例にして話を進めましょう。


 今からクーデレヒロインを作ります。

 名前は、クーデレらしくユキちゃんにしましょう。

 彼女はクールビューティー美少女らしい黒髪に、毒舌家属性を持ってます。

 身長は165cmで、体重は45kgで、貧乳(重要)です。


 さて、クーデレヒロイン、ユキちゃんのプロフィールが完成しました。

 どうですか。皆さんはこのユキちゃんが魅力的だと思いますか?

 この質問に対して、オタク経歴十三年の僕は断じて言えます。

 いや、このキャラクターは魅力的ではない、と!

 理由は簡単です。

 ありふれている!

 毒舌家属性の黒髪貧乳美少女なんて、あまりにもありふれているのです!

 僕の作品を読まずとも、他の作品に存在しているのですよ。

 僕の書いたより、もっと魅力的な毒舌家属性の黒髪貧乳美少女さんが!

 断片的な性格の羅列だけでは、キャラクターの個性が足りない。

 そうです。キャラクターの魅力とは、つまり個性。そのキャラクターだけの何かが必要なんです。

 では、その何かはどこから来るのか。

 僕はその答えをキャラクターの『過去』から見つけました。

 例えば……。


 ユキちゃんはある財閥の娘として生まれした。

 実はユキちゃんには妹がいました。名前はハルちゃんと言います。

 ユキちゃんの父は才能万能主義の人間でした。

 ユキちゃんの父はある実験を行いました。

 実験の内容はこうです。

 相対的に才能が劣るハルちゃんの才能を、ユキちゃんに移植する。

 その過程でハルちゃんは死に、ユキちゃんは心の傷を負います。

 ユキちゃんが自分の異能を磨き続ける理由は、移植された妹の能力を使うたび妹の顔を思い出せるから。

 ユキちゃんの目標は妹を殺した父を殺すことです。


 こうやってユキちゃんの過去を作ったとしましょう。

 キャラクターの過去を作ってしまえば、ユキちゃんのクーデレ性格にも毒舌家設定にも自動的に説明がつきます。

 皆さんはどうでしょうか。僕は断片的な性格の羅列よりは、こちらの方がキャラクターが生きているように感じられて好きです。

 結局、言いたいことはこれです。

 キャラクターの性格以前に、キャラクターの性格が『〜デレ』になった理由があるはずだ。その理由こそがヒロインの過去で、魅力的なヒロインを作るためには、ヒロインの過去にもっと念を入れる必要がある。

 もう少し付け加えると……。

 ヒロインの不幸な過去。不幸な過去が作り出した何かの欠如。

 その欠如を主人公が埋めてあげることができればベストです。

 クーデレヒロインの場合、感情表現が不器用です。

 感情表現が不器用だということは、そのヒロインに何かの欠如があるということを意味してます。

 その欠如を主人公が満たしてあげ、クーデレヒロインの心理状態が変化する。この過程でこそ、ヒロインの魅力が表れるんです。

 例えば、過去なろうで人気だった奴隷ヒロイン……。

 奴隷ヒロインには、人間不信、愛情不足などの欠如があります。

 だから感情表現も、意思表現も不器用なはずです。

 しかし、主人公がこの欠如を満たしてあげた時、彼女はきっと変わります。

 主人公にメロメロになるのです。

 恋する主人公に見せるために、鏡を見ながら笑い方を練習するとか。

 これこそが、クーデレヒロインの魅力を表せる方法だと、僕は思います。


 参考になれたなら幸いです。

 僕は新人賞での作家デビューを目指していて、現在11月締め切りのGA文庫大賞用の原稿を作ってます。

 筆が進まないたびに、自分の創作論をうpしていきます。

 主に、魅力的なヒロインの創作法について語りたいと思います。

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